自分の体を感じられない子が多い
「秋はスタンドでファウルボールの笛吹き役だった子が、ひと冬超えるとセンバツの初戦で6番・サードでスタメン出場して活躍したことがありました。その子は当時2年生だったのですが、そのままレギュラーを獲って大学でも野球を続けて、一流の社会人チームに進みました」。
だからこそ、こういった日々の積み重ねは重要なのだ。ただ、現代の子供たちが抱える問題は多い。外で駆け回って遊ぶ環境が激減したことにより、様々な弊害が起きているのも事実だ。
「最近は自分の体を感じられない子が多いですね。例えば今から走るぞ! っと言われたら、僕らなら手首を回したり、アキレス腱を伸ばしたりしてウォーミングアップをしますよね。でも今の子たちはそれができないんです。アップの時に“今どこを伸ばしているのか分かるか?” と聞いても大半の子は分からないと言います。それに、以前、遠征の時に公園で素振りをしていた時にブランコがあって、選手に乗ってみてと言ったんです。でも、誰も乗れなかったので私が乗って漕いで見せたんですけれど、それをやってみろと言っても誰一人できませんでした。外で遊ぶことで自然と体の使い方を覚えていくものなのですが、それが分からないのが今の子供たちなんです。
最近は、色んな器具が世の中に出ていて、自分で鍛えようと思えば鍛えられます。筋膜リリースなんかも自分でできる時代なのですが、ちょっとした動きでもここがおかしいと思った時に普段から自分の体の使い方が分かっていれば、ここをこんな風に動かしてみたら何とかなるんじゃないかとか、自分で調整ができるはず。だから今の子に必要なのは“感じること”。感じることは野球の中で一番大事な要素です。目で見て体で感じるという作業が今の子は乏しいので、アップの中で感じさせることが一番の目的です」。
その時代、その時代に合わせて選手と一緒に進化してきたアップの手法。選手の体の成長と同時に心の成長も願う指揮官の思いは、とどまるところを知らない。アップを終えると、だいたいはノック、バッティングへとメニューが移っていくのだが、龍谷大平安では先にバッティングをして、後にノックを行う。その理由は「バッティングを先にやってからの方がノックで集中力が増すから」だと指揮官。気持ちよく打たせた後にノックではキビキビとした動きを見せるナイン。元気な掛け声と一緒に、最後まで指揮官の威勢のいい声がグラウンドに響き渡っていた。(取材・写真:沢井史)
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