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【福岡大大濠】八木啓伸監督|試合に出られない者がいることを忘れてはいけない

2025.6.25

柴田獅子、山城航太郎、山下舜平大など、近年立て続けにプロに選手を輩出している福岡大大濠高校。彼等を指導した八木啓伸監督に、これまでの監督生活の中での失敗、後悔、忘れられない敗戦などについて話を聞いたインタビューの後編です。


浜地育成の教訓がふたりのドラフト1位を生んだ

<インタビュー前編はこちら→

━━入学時には将来の可能性を持った多くの才能を預かることになります。後々“もっとこうしてあげれば、もっとすごい選手になっていたかもしれない”と後悔した経験はありませんか?

私は何も高校の間にベストを迎えなくてもいいと思っているんです。ピークは人それぞれですから。もし、高校にいる間にピークを迎えさせたいと考えたら、あれもこれも詰め込もうとしすぎて、いろんな負荷をかけてしまうことになります。“ウチでピークを迎えなくてもいいから、いずれ良い投手になれよ“という思いで接しているので、そういう後悔を感じたことはありません。ただし、それも浜地以降の話ですけどね。浜地の場合は夏にピークを持ってこさせようとしすぎて、余計な負荷をかけていました。実際に浜地は夏が終わってからがグッと伸びましたよね。もちろん夏にその時点でのピークを持ってこさせようとはしますが、そればかりを考えすぎて子供たちに変なプレッシャーをかけてしまっては元も子もありません。大濠でベストを迎えなくてもいい。こういった考え方を持ったことで、逆に投手はすくすく育っているような気もしています。

━━浜地投手への指導から学んだ教訓は、のちに山下舜平大投手(オリックス)や柴田獅子投手というふたりのドラフト1位右腕の指導にも大いに活かされることになりますね。

それは感じますね。もちろん浜地にもすごい将来性を感じていましたが、一方で夏にピークを持ってこさせたいあまりに負荷をかけすぎてしまった。それ以降は、無理をさせないというか、あまり詰め込まないというか、プレッシャーを与えないようになりました。そういった自分の育成方法の確立には、大いに役立ったと思います。山下には「小手先に走るな。変化球はカーブだけで充分だ」と指導していましたが、そこに行き着いたのも浜地の時の失敗があったからです。本当に高校で山下のピークを持ってこようと考えていたなら、おそらく他の変化球も投げさせていたでしょうね。



━━コンバートで失敗した例はありませんか?

野手同士のコンバートで失敗したことはありません。ただ、投手を野手にとか、打撃が良い子を投手を野手で出場させるなどした時に、落とし穴がありますよね。どちらにも特化できず、ただ余計な負担をかけてしまったことはあります。それもやっぱり浜地なんです。彼も最後の夏に本塁打を打ったように、打撃がすごく良かったので、投げない時には外野や一塁で出場させていました。ただ、浜地はすごく繊細な子なので、やはり投手に特化した方がよかったのかもしれません。これはタラレバになってしまいますが“あの時、もし投手に専念させていれば……”と思うことは、正直あります。

━━打撃力のある投手の扱い。それは昨年の柴田投手の起用や指導にも大いに役立ったのではありませんか?

そうです。やはり浜地の時に抱いた思いが活きましたね。柴田は最速149キロを投げる右の本格派でありながら、通算19本塁打の大砲。いわゆる投打の二刀流でした。打者として、本当に凄まじい打球を放っていましたからね。結果的に夏は柴田を打者メインで使ったので負担をかけてしまったのですが、それ以前はできるかぎり投手への負担を減らすように気を付けていました。最後の夏も、本当は柴田を打線の下位に置きたいと思っていました。そうやって彼の負担を軽減させたうえで、投手メインで行かせるつもりだったのです。ところが、いまいち打線の流れが良くなかったので“ここは思い切って柴田で行ってみようか”ということになり、県大会(ベスト16)に入ってから4番に置いたというのが正直なところです。ただし、それだけ思いきった打線の組み方ができたのは、もうひとりのエース・平川の調子がすごく良かったからです。もし投手が柴田ひとりであれば、4番に置くことはなかったかもしれません。



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