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「くまのベースボールフェスタ」活躍が目立った選手たち

2018.11.27

三重県のほぼ最南端に位置する熊野市。和歌山県との県境に位置しており、2004年に世界遺産登録された熊野古道でも知られている。この熊野市と近隣の高校によって11月に行われているのが『くまのベースボールフェスタ・練習試合in熊野』だ。毎年全国から強豪校が参加しており、今年は11月24日、25日の二日間で行われたが、このイベントをTimely!WEBではおなじみの西尾典文さんがレポートする。


24日の試合

敦賀気比3-2近大新宮(近大グラウンド)
※移動のため6回まで観戦

初日、まず向かったのは近大グラウンド。この試合で目立ったのは夏の甲子園でも登板した敦賀気比のエース、木下元秀(2年・投手兼外野手・182cm・84kg・左投左打)だ。ただこの日、光ったのはピッチングではなくバッティング。4番、ライトで出場したが、懐の深さを感じる大きな構えからゆったりとタイミングをとり、鋭く振りだして大きくフォローのとれるスイングに長距離砲としての素質を感じた。第一打席では変化球を呼び込んでライト前ヒットを放ったが、その打球の鋭さはまさに超高校級。第二打席は警戒されてストレートの四球、第三打席はタイミングを外されて見送りの三振に倒れたところで移動のため球場を後にしたが、事務局の人の話ではその後にライトのフェンスを大きく超える特大の一発を放ったという。
また翌日の試合でも一発を放ったとのことだったが、それもうなずける打席での存在感とスイングだった。課題は少しテイクバックでバットが背中に入るところと、右足の踏み込みの強さが物足りないところ。ただ、下級生から背番号1を背負いながらこれだけバッティングで目立つのはセンスの高さの表れである。投手としてももちろん将来のある選手だが、この日のプレーを見る限りではバッターとしてより魅力を感じた。

この日は外野として出場して快音を響かせた敦賀気比のエース、木下元秀


健大高崎4-0創志学園(紀南高校グラウンド)
※1回表途中から観戦

お目当てはもちろん創志学園のエース、西純矢(2年・投手・184cm・80kg・右投右打)。前の試合が早く終わったようで到着した時には試合が始まっていたが、何とか全投球見ることができた。到着した直後の立ち上がりは少し制球がばらつき、初回にエラーで1点を失ったものの2回以降は立ち直り見事なピッチングを披露。この日は100キロ台のカーブと小さく沈むツーシーム系とフォークなどの変化球を多めに使い、ストレートと決め球のスライダーは少なかったがそれでも安定感は申し分なかった。8回に3点を追加されて4失点完投で負け投手となったが、与四球は2、10奪三振と凄みも十分に見せ、7回にこの日最速となる146キロをマークするなどスピード、スタミナも申し分なかった。少し投球のテンポの良さがなく、それが打線の援護の少なさに繋がっているようにも見えるが、投げているボールのレベルはどれも一級品。順調にいけば来年のドラフト1位指名は有力だろう。

今夏の甲子園を沸かせた来年のドラフト注目右腕、創志学園の西純矢

健大高崎ではその西から8回にホームランを放つなど2安打をマークしたトップバッターの宮石悠生(2年・左翼手・170cm・68kg・右投右打)と背番号14ながら快速を披露した猪俣俊介(2年・右翼手・168cm・55kg・右投左打)の二人が目立った。宮石は小柄ながらリストが強く、右方向への鋭い打球が持ち味。猪俣はサード内野安打で一塁到達3.8秒台をマークし、またサードを狙った走者と一塁をオーバーランした打者走者を補殺したスローイングも見事だった。猪俣はまだまだ非力だが、ともに機動破壊の中心人物として来春以降も注目したい選手である。


関東一0-3近大高専(くまのスタジアム)
※3回から観戦

主力二人が東京都選抜のメンバーに選ばれて不在ということもあってこの日は連敗に終わった関東一だが、そんな中でも楽しみな素材がいた。この試合で先発のマウンドを任せられた背番号20の今村拓哉(1年・投手・179cm・78kg・左投左打)だ。スピードはまだまだ130キロ程度だが、悪い癖のない流れのスムーズなフォームが特長。手元で数字以上にキレを感じるボールでフライアウトを多く奪った。体の強さと躍動感が出てくれば、来年は一気にスピードアップする可能性も秘めているだろう。


25日の試合

近大高専2-7昌平(くまのスタジアム)

昌平の野手で目立ったのが1年生ながら4番に座る渡邊翔大(1年・左翼手・176cm・78kg・右投左打)だ。体つき、構えた時の力感、打席での雰囲気は下級生とは思えないものがある。第一打席は初球のストレートを一振りでとらえてセンターオーバーのスリーベース、第二打席ではライト前、第三打席では変化球をとらえてライトオーバーのツーベース、第四打席はストレートに詰まらされたもののセンター前に落として4安打、2打点の大活躍だった。少しグリップの位置が低いのは気になるものの、パンチ力と打撃センスには光るものがある。スリーベースでの三塁到達で11.95秒をマークするなど脚力もまずまずのレベルだ。

1年生ながら4番に座りチームを引っ張る昌平の渡邊翔大

昌平ではエースの米山魁乙(2年・投手・176cm・78kg・左投左打)も好素材。この試合では最終回の1イニングだけの登板だったが、アウト3つを全て三振で奪い試合を締めた。最速は135キロだったが、シャープな腕の振りで数字以上に速く見えるストレートが持ち味。もう少し軸足にしっかりためを作れるようになれば腕の振りが更に生きてくるだろう。

昌平のエース米山魁乙


羽黒0-2創志学園(防災公園球場)
※6回まで観戦

羽黒は夏の甲子園でも好投を見せた篠田怜汰(2年・投手・178cm・70kg・右投右打)が先発。立ち上がりから高めに抜けるボールが目立ち、スピードも最速137キロにとどまるなど本調子ではなかったものの、5回を投げて被安打6、4四球ながら1失点にまとめて何とか試合を作った。フォームで気になったのは軸足の膝の折れ方が深く、沈み込む動きがあるところ。左足に体重が乗り切らず、リリースで調整しようとして上下へのばらつきが目立った。逆に良かったのが緩急の使い方。100キロ台のカーブを見せ球としても上手く使い、打者のタイミングを外していた。見るからにまだ細いだけに、この冬の体力面の強化が春以降のカギとなりそうだ。

今夏の甲子園でも好投を見せた羽黒のエース篠田怜汰

創志学園は西が連投となったが、力が抜けたことで逆にコントロールが安定し、羽黒打線をほぼ完璧に抑え込んだ。ストレートの最速は142キロながら篠田と同様に緩い変化球を上手く使い、改めて試合を作る能力の高さを見せつけた。また素早い牽制で一塁走者を刺し、バント処理でも軽快な動きを見せるなど投げる以外のプレーも一級品。西を目当てに訪れたギャラリーからも感嘆の声が聞こえる内容だった。(取材・写真:西尾典文)

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