120人の部員を持つ創成館。部員全員でアップを行い、そのあとは3つの班に分かれて課題に取り組んでいる。専用グラウンドを使っての効率的な練習方法を紹介する。
強豪校の練習で共通しているのは、集中力と、移動の速さ。創成館の選手たちも同じ空気が感じられる。昨秋の九州大会優勝を見て入ってきた新入生の数は43人。部員120人と九州でも屈指の大所帯チームとなったが、5名のコーチが分業してきめ細かい技術指導を行っている。寮生活はほぼ全員の114人。
稙田龍生監督(54)、松本真一コーチ(46)、末永知昭コーチ(27)が寮監をつとめ「練習が終わればオヤジ役。私は選手と一緒に風呂にも入りますし、冗談で笑わせたりしています」(稙田監督)と言うように、家族のような雰囲気づくりを心掛けている。また時代に合わせて、保護者との交流も取り入れ、定期的に懇親会を行っているところも「今どき」スタイル。「私は元会社員ですからね、組織づくりを大切にしています。みんなが応援してくれないとスポーツは勝てません」。
「応援されるチームを目指す」。
これが九州三菱自動車野球部で選手、監督として活躍した稙田監督流のチーム作りだ。
この日の練習は、準公式戦であるNHK杯を4日後に控えていたこともあり、A班はコンディショニングに重点を置いた。事前にコーチ陣が考案したメニュー表のプリントを稙田監督がチェックをし、16時ごろ練習がスタート。120人でアップを行い、そのあと3つの班に分かれて課題に取り組む。創成館の選手を見ると、中学時代に有名だった選手や、大きな大会で活躍した選手が多数いるというわけではない。それなのに「勝てるチーム」へと成長できるのはなぜなのか。稙田監督は「現チームは、物怖じしない、勝負強い選手が集まったおかげ」と分析するが、班に分かれて行う濃密な練習が選手の成長を促したといっていいだろう。
例えば、この日はA班がトレーニングを行っている間、メインのスペースでBチームが末永コーチのケースノックを受けていた。走者を置いてどこでアウトを取るか、素早い判断を求められる練習だ。技術的にはまだ未熟な選手たちだが、Bチームであってもダイヤモンドを使って練習を行い、試合を想定した動きを身につけていく。ミスに対し、コーチは怒るのではなく「問いかける」。そうやって「自発徹底」が養われていく。