グラウンドに響き渡るナインの掛け声と、選手を鼓舞する髙野監督の声。90名を超す上尾ナインの統率の取れた動きは、髙野監督が前任の鷲宮高校時代から追求する「一体感」がある。高校野球の大一番である夏の大会が迫る上尾の練習をレポートする。
トレーニングを兼ねたアップ練習
前任の鷲宮高校時代からアップ練習はトレーニングも兼ねたハードなものにしていると髙野和樹監督は言う。キャプテンの日下春人選手や北内真太選手も練習の中で一番キツイのは? という質問に対し「アップです……」と口を揃えた。90人を超す大所帯が統率の取れた動きと、必死に声を出す姿はとても迫力がある。「強豪チームに対抗するためにはこちらも“圧倒的な何か”が必要となります。それが『一体感』なんですよ。目に見えない力ですが、例え一人の力では到底勝てなくても、部員全員が一体になることで強豪にも対等に勝負ができると私は思っています。アップ練習はそういった力を付けるためにも非常に重要ですね。このアップ練習を見て、上尾の魅力を感じ入部する選手が非常に多いですね」。
全員が足並みや声を揃えることが目的の一つでもあるが、下半身強化のトレーニングの意味も兼ねている。苦しい状況でも声をあげることは止めず、ナインが一体となり取り組んでいる姿が印象的だった。
カバーリングを重視したゲームノック
前日の練習試合で投手陣も含め、守備に綻びが出たことで行われたゲームノック。ノッカーがマシンガンのように打つスピード重視のものではなく、守備陣形や全体の動きを重視し、一球一球大事に行なわれていた。髙野監督はワンプレーごとに「ナイスプレー!」と声を上げることもあれば、動きが怠慢になった選手にはプレーを止め、丁寧に指導する。髙野監督の右腕として、選手からの信頼も厚い片野副部長はこう語る。「試合になれば“暴投は起きるモノ”と僕らは考えています。だからこそ、ミスをした1人ではなく、他の8人のカバーリングが重要になってくるわけです。カバーリングをすることで『次のプレーや、その次のプレー』というものが自然と覚えられますよね。ただ、意識をして行っている段階ではまだまだ。これが無意識にできるまで反復練習をしないと意味がないですから」。
守備時のカバーリングや、ポジショニングを意識することから始め、数えきれないほど反復練習を積み重ねることで、いつかそれが無意識にできるよう身体と頭に染みついていく。ランナーも含め、そういった野球の基礎となる動きを日々鍛えている。