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【日大鶴ヶ丘】野球の本質を学ぶ『107カ条』とデータを生かしたメンバー選考

2018.3.26

写真|日大鶴ヶ丘高校野球部の監督、萩生田博美

早稲田実業、日大三、東海大菅生など全国屈指の強豪が覇権を争う西東京地区。そんな激戦区で部員全員が野球の本質を学び、『伝統の107カ条』と細かなデータを活用し、チーム作りに役立てているのが日大鶴ヶ丘だ。春の都大会を数日後に控えた同校を取材した。


日大鶴ヶ丘野球部伝統の『107カ条の掟』

『明大前』駅から徒歩8分という都心に校舎を持つ日大鶴ヶ丘。野球部は校舎から少し歩いたところにある総合グラウンドをサッカー部、アメリカンフットボール部と共有して使っている。あくまで共有のため、満足にバッティングやノックができるわけではない。さらに19時までに完全下校がルールとして定められているため、平日の練習は約2時間。そんな限られた時間と環境の中、萩生田博美監督は目的を明確にし、日々の練習に取り組んでいる。

「あれもこれもやりたいと追いかけていては上手くいきません。今日はバッティングと走塁。明日は守備。といったように、目的を明確にし、効率性を重視した練習メニューで選手たちを鍛えています。うちは実力を持ったスター選手が入部してくるチームではなく、ごく普通の選手ばかり。選手のスキルで日大三や早実と真っ向勝負をして勝つのは正直難しいです。その差を『試合中の判断力』で補い、戦わなければいけないと思っています」。

試合中の判断力を養うために、日大鶴ヶ丘野球部には伝統として『107カ条の掟』がある。この掟には野球の基本的なノウハウやケースに応じた戦術などが事細かに記されている。入部時に選手全員に渡し、ミーティングで107カ条の内容に関した講義を萩生田監督自ら行っている。

「能力が高い選手ならどんな場面でも大きいのを狙えばいいと思うんですよ。でも、それができない選手ならどうするのか? 進塁打を打ったり、四球を選ぶなどベストな選択はできなくても、ベターな選択をできるプレーヤーにならなければいけない。そのための教材のようなものです。それをチーム全体で共有することで、100点を目指す野球ができなくても、常に70点の野球ができるチームになっていくと私は考えています」。

データが2014年甲子園出場に繋がった

萩生田監督はメンバー選考の際に、データを活用する。打者ならば打率・長打率・塁打率・打点・本塁打数・出塁率など。投手なら四球数・奪三振率・防御率。マネージャーが試合ごとにスコア表をパソコンに打ち込み、各データを算出し、チームで共有している。

「データを取り始めたのは約12、3年前から。試合の大事な場面で打つと『調子が良いぞ。打てる選手だ』と錯覚してしまうことがよくあります。そんな印象だけで、果たしてメンバー選考をしていいものかと疑問に思い、データを取ってみることにしたんです。

あとは、試合の結果についてさまざまな理由を探すためですね。野球は確率が低いスポーツだからこそ、時として偶然が重なり勝ってしまうことがあります。でも、数字は嘘をつきません。データを見返すことができれば、そういった結果に対し客観的な視点を持つことができますね」。

聞くと2014年の夏に、決勝で東海大菅生を2-1で破り、甲子園に出場したチームでもデータが上手く使われたという。

「春の大会で上手く勝ち上がり、夏の第一シードが取れたんですよ。でもデータを見返してみると、なんとチーム打率が2割もない。ちょっと待てよ。全然打てないじゃないかと(笑)。このままではマズいと感じ、夏までに打力を強化しました。投打上手く噛みあい甲子園に行けましたが、きっとあの時にデータを見返さなかったら結果は違ったと思います」。

快進撃の裏側にあったデータ野球。印象だけではなく、裏付けとなる数字を選手たちに示すことで、メンバー選考では全部員が納得した形で結果を受け入れられるという。(取材・撮影:児島由亮)

後編は日大鶴ヶ丘の練習を紹介します。

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