春2度、夏3度の全国制覇を誇る大阪桐蔭は“平成最強校”の呼び声が高い。また、中村剛也(西武)や中田翔(日本ハム)、浅村栄斗(西武)など多くのスラッガーをプロに輩出するなど、選手の育成にもしっかり取り組んできたチームだ。
どのようにしてチームを作り、育成しているのかは誰もが気になるところだが、成長に欠かせないのが冬場の過ごし方だ。翌春のセンバツに出場する・しないで、多少の違いはあるものの、冬場の時期について、1998年からチームを率いる、西谷浩一監督はこう語っている。
「私たちにとって、冬場は大きくいうと仕込みの時期です。仕込みがしっかりできなかったら、いい料理ができないですよね。その仕込みをしっかりしていこうと選手たちには話しています」
トレーニングの内容に関しては、その年々によって異なるが、基本的にはバランスよく鍛えるというのを主眼に置いている。「ウェイトトレーニングでは上よりも下、前よりも後ろが大原則ですが、全体のベースをどれだけ作り始めることができるか」。飛ぶことや跳ねることなどもしっかり取り組んでいる。
とはいえ、昨今の多くの高校がそうであるように、大阪桐蔭もまた、トレーニングだけが冬場のメインになるわけではない。ボールやバットを使った練習をメニューに取り入れている。
その理由は明白だ。
「僕らが選手の時代は、強豪校ほどボールを触らないというのがステータスみたいなところがありました。“冬はボールを持たない”と、それくらい練習を追い込んでいるんだっていうやり方だったと思うんです。しかし、指導者になってみて思ったのは、冬の間に投げないでいると、インナーが弱ってしまって、オフからシーズンインの移行期に故障することが多かったんです。オフにまるっきり肩や肘を寝かしてるために、インナーが弱って違和感や故障に繋がるということからボールを触るようにしました」
当然、シーズン中のように大遠投をするわけではないが、投げない日が続くようなことはないという。
一方、バッティングの方では、しっかりとボールを打ち込んでいく。オフの時期だからこそ身につく力があるからという考え方があるからだ。
練習はやや温かな室内練習場で打ち込むだけでなく、屋外に出てのフリー打撃も行う。室内だけだと、バッティング自体が小さくなってしまうことを危惧し、しっかり振るということを忘れないためである。プロで活躍する選手たちにしっかり振るタイプが多いのは、こうした練習から植え付けられているかもしれない。
西谷監督は力説する。
「ティーも大事ですけど、やはり前から来た球を打つことに意味を感じています。というのも、高校生というのは、いつバッティングのコツに気づくか分からない。冬トレの間にも、新しい技術習得の瞬間に出遭うかもしれないのです。それは打ち込んでくることで違ってくるんです。また、公式戦などの実践をやらない今は、目先のことにとらわれず、思い切ったことにもチャレンジできる時期でもあるんです。シーズン中では、少し変えることでフォームが狂ったりするのでためらったりしますが、オフの時期だとそういったことを気にしなくていい。思い切ってチェンジしてみたことから何かが生まれないかなと思っているんです」
つまり、大阪桐蔭では、冬場は丸っきりトレーニングだけに没頭するのではなく、高校生の2年半という決して長くないスパンのなかで、いかにして技術も伸ばしていけるかが根底にあるのだ。(取材:氏原英明、撮影:浅尾心祐)
【「平成最強校」を率いる西谷監督のオフ練習、オフトレ論(後編)】
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