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【県岐阜商】鍛治舍監督「伝統校だからといって、時代に乗り遅れてはいけない」

2018.4.6

写真|取材に答えながら練習を見つめる鍛治舍巧監督

昨夏まで秀岳館(熊本)を4季連続で甲子園に導いた鍛治舍巧氏が今年3月、母校・県岐阜商の監督に就任した。高校球界を揺るがす大ニュースとして日本中の注目を集めている。県岐阜商は全国屈指の公立校で、近年も一定の成績を残してはいたが、夏の甲子園はここ5年間逃している状況だ。名将は伝統校をどう再建するのか。就任1ヶ月が経った今、ビジョンとその練習に迫った。

「思わなければ叶わない」

岐阜県の高校球界が大きく動こうとしている。それを強く感じさせる雰囲気が漂う。 グラウンドの選手の動きがテキパキしている。緊張感もある。

「甲子園での勝利数(春夏87勝)が公立では全国1位でも、全体では上から4番目でしかない。7年後に野球部が創部100年を迎えるので、それまでに100勝したい。ただ最初の100年で100勝しても、今のままでは次の100年で表舞台から消えてしまう。次の100年でも100勝できるものを築いていきたい。一からチームを作り直したい」(鍛治舍巧監督)

練習メニューは「特別、他と違った練習をしているわけではない」(同監督)という。取材日は春休み中だったが、学校行事の関係で練習は午後3時からスタート。30分ほどのアップの後、2時間で実戦形式の守備練習とシートノック。さらに次の2時間で、実戦形式とフリー形式で打撃練習を行った。8時過ぎに一日を終えた。

とにかく練習のテンポがいい。実戦形式の練習では、プレーごとのインターバルが短い。シートノックでも、次から次へとボールが回る。ノッカーが内野にノックを打つときなど、速いときは5秒に1球のペースで打球が放たれる。「秀岳館のころに比べ練習時間が半分なので、スピードを上げていかないと。指導者も教えすぎてはだめ」と鍛治舍監督は言い、プレー後の指導者陣の指摘もシンプル。部員の動きもスピーディーだ。

写真|県立岐阜商業のノックの様子

この1ヶ月で、プレーに対する部員の「思い」が格段に強くなったという。鍛治舍監督は「思わないことは叶わない、思えば叶う」と強調するが、それが如実に表れたのが、外野手の返球だ。これまでは半ば漠然と中継へ返すだけだったのを、可能な限り各塁へ一人で送球するよう指揮官は求めた。それに呼応し、外野手の送球が強くなってきた。

写真|スタンドからグラウンド全体を見渡す鍛治舍巧監督

「最初見たときは全部、カット(中継への返球)だったんですよね。それでいて肩が強いと弱いとか言ってて。結局、僕が(ダイレクトで)投げろと言ったら投げるし、投げられるんですよ。思わないことには叶いません」

単なる精神論ではなく、高いレベルを目指す志がそのままプレーに出る。

野球を「アップデート」したい

野球を「アップデート」しなければ――。鍛治舍監督は今の状況をそう表現する。
「伝統校だからといって、時代に乗り遅れてはいけない。今、必要なのはスピードとパワー。ただ、どちらかというと、今までは技ばかりに頼っていた印象がある。新しいことをインプットしなかったら、新しいアウトプットは生まれてこない」

スピードとパワーを基軸に、県岐阜商の野球も生まれ変わろうとしている。たとえば攻撃では「いずれは1番打者から9番打者まで、ホームランを打てる打線が理想」と語る。実戦形式の練習では、打席に立つ部員に「ちょこんと打つな。強く打て」と指揮官の声が響く。県岐阜商は近年、「単打で連打」を合言葉としていて、それで結果が出た年もあったが、“次の100年”を見据えて明快にスタイルを変えていく。

写真|県立岐阜商業のバッティング練習の様子

夏に向けて「打撃も守備も上がってきている。あとは投手力次第だが、このままいけば3ヶ月後は十分戦える」と名将は言う。4月15日から始まる春の県大会への切符は既に手中にしている。まずはこの春、その片鱗を目にすることになりそうだ。(取材・撮影:尾関雄一朗)

【後編】ノーステップ打法も健在、鍛治舍監督「勝利の方程式は変えない」

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