学校・チーム

【智弁学園】監督が大切にする「イマドキ選手」とのコミュニケーション(後編)

2018.9.28

昨年、築40年以上経っていた寮が新しく建て替えられ、周囲の環境も抜群に良くなった。部屋は1〜2人部屋で1階には食堂と大浴場を完備。そして洗濯機は「2人に1台は使えるように」という指揮官の配慮もあり、30台以上がずらり。乾燥室もあり、雨の日でも洗濯物が干せる設備もあり、選手らにとっては何不自由ない環境だ。



新チームは、指導して2カ月近くが経ったが、現チームは坂下翔馬主将をはじめ、吉村誠人選手や塚本大夢選手、藤村健太選手など、今春のセンバツを経験した野手が多く残る。それでも小坂監督は現チームは「それほど打てない」と言う。
「この時期、良い投手に当たればそう簡単に打てないです。経験者がいても、細かい野球ができないと点が取れません。バントとか走塁とか、そのあたりをきっちりとやれないと。あとは気持ちのコントロールができるようになること。こちらから適度にいじって様子を見ることもあります」と指揮官。
毎年、ムードメーカーになる選手が中心になってベンチが乗っていくことが多いが、現チームは比較的おとなしい選手が多い。ガッツのあるキャプテンの坂下が大きな声でチームを盛り上げるが、盛り上げ役は1人より2人以上いた方が当然心強い。

練習試合では負けてもいい

センバツは3年連続出場をしているが、夏は県大会で2年連続で天理に敗れている。いずれも準決勝で対戦し、スコアは同じ7−8。昨年は本格派右腕の松本竜也(現ホンダ鈴鹿)、今年はキレのいい球を武器にセンバツでも好投した左腕の伊原陵人というエースがいずれも打たれ、打撃戦の末の結果だった。「去年、今年と同じような負け方をしてしまった」と指揮官は悔しさをにじませる。
「夏は負けたら終わりだし、秋や春と違う独特な雰囲気がある。その中で勝たなアカンという気持ちが強すぎましたね。最近は秋に勝ってセンバツに行って、春もある程度勝てていたんですけれど、夏がこんな風でしょう。どんな試合でも負けたくないから、練習試合も無敗で、その流れで公式戦へ…という感じなんですけれど、この新チーム結成以降は、練習試合では負けてもいいから、反省しながら公式戦で生かして勝っていかないととは思います」。

秋の大会が始まったばかりの頃、ナインにこれからどうしたいのか、目標を設定してこい、と“宿題”を与えたという。すると返ってきた言葉は“日本一になりたい”だった。
「もちろん、ずっと勝つに越したことはないですけれど、その中でどんなチームを作っていくか。選手は毎年変わるし、去年やっていたことが今年も通用するとは限らない。その難しさはありますね。それでもやっぱり選手の“元気さ”は大事。そこをうまく引きだして上げられるような雰囲気を作っていきたいと思います」。

3時過ぎからの全体練習を終えると、7時前には一旦練習が終わる。だが、その後に「課題練習」という、個々の課題に特化した練習が始まる。薄暗くなったグラウンドでバットを振る選手、個人ノックを受ける選手…。それぞれが必死に課題に向き合う中で、坂下主将は来年への思いを明かす。坂下は1年夏から二塁手のレギュラーだが、2年連続で夏の大会で悔し涙を飲んだ。
「自分は2年連続で夏の大会に出させてもらいながら1点差で負けたのは、自分の心にスキがあったからだと思います。練習でもスキを見せないよう、ランニングメニューで最後まで走り切ることやトレーニングでもやり切ること。普段からそういう意識を持っていかないといけないです。そんな中でも明るく、元気に。自分も声を出して全員でチームを盛り上げて、夏まで勝ち切りたいです」。

指揮官と選手の絆も今後のチームの躍進にどう影響していくか。元気さを前面に出した智弁学園の挑戦はまだまだ続く。(取材・写真:沢井史)

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