経験者がいても勝てるとは限らない
練習は授業を終えた3時半ごろからスタート。グラウンドは学校から自転車で5分ほどのところにある。ただ、近隣に住宅地などがあるため、夜間照明などの兼ね合いで夜遅くまでの練習はできない。夏場など日が長い時期は日没後の20時近くまで練習できるが、この時期は19時前には全体練習を終えることになる。テスト前等も練習時間の規制があり、冬場は積雪で外では練習できないため、校舎近くの室内練習場で体を動かす。「全国の私学に比べると、練習時間は短い方だと思います。平日はだいたい3時間くらい。バッティング練習がメインになりますが、守備も含めて実戦練習を多く取り入れています。効率を上げるために、バッティング練習をしながら走者をつけたり守ったり、色んなことを同時進行させます。大会が近くなればなるほど、実戦練習は多くなります」(林監督)。
なおかつ、日本海側は天気が急変することが多く、天気予報は晴れでも突然雨に見舞われることもある。そのため空を見ながら進行状況を見てメニューをこなしていく。
今春のセンバツ出場は実に13年ぶり。もっと言うと春夏連続甲子園に出場したのも23年ぶりだった。実はこれまでなかなか秋の大会は勝てず、北信越大会に出ても早々と姿を消すことが多かった。前チームも結成直後は、そこまで期待の大きいチームではなかったという。
“捲土重来”というテーマを掲げてスタートしたが、秋から順風満帆で夏まで駆け抜けられた訳ではない。昨秋はケガを負ったキャプテンの竹谷理央抜きで県大会を制し、北信越大会は当時1年生の奥川恭伸が台頭。だが、打撃が振るわず冬場は打撃強化を課題に挙げ、パワーアップを図った。そして決して前評判が高くなかったセンバツで2勝したことでもっと勝ちたいと思うようになった。「彼らの薬は勝ったこと」と指揮官。ベスト8で気が緩むのではなく、さらに高みを見つめるようになった。
そして今夏の県大会。5試合で53得点を叩き出し、全試合完封勝ち。まったくスキのない試合運びで県を制した。こういうケースを見ると、高校生ののびしろは無限大だということをあらためて痛感する。ただ、現チームを預かる上で林監督が危惧していることがある。
「17年のチームも戦力が多く残っていて注目していただいたのですが、春の北信越大会こそ勝てたけれど、県では秋も春も夏も勝てなかったんです。経験者がいても勝てるとは限らないと分かりました」。
注目されればされるほど、力を発揮させることの難しさを感じた。それだけに、指導者としてどんな環境で選手をプレーさせてあげられるか。雰囲気作りから一層気を配っている。
「あの経験を生かすも殺すもこの秋です。かなり研究もされると思いますし、厳しい戦いにもなると思います」(林監督)。
迎える秋の北信越大会。「県大会のように圧倒的に勝っていきたいけれど、野球は何が起こるか分からないので、1球1球を大事に戦いたい」と山瀬慎之助主将。あの悔しさを知るナインたちは誰にも負けない秋、そして来年の戦いを見据えている。(取材・写真:沢井史)
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