昨年夏の甲子園ではベスト4に進出し、優勝した花咲徳栄を最も苦しめる戦いを見せた東海大菅生。夏の甲子園は17年ぶりの出場だったが、西東京大会では2014年から3年連続で決勝に進出するなど安定して成績を残し続けている。そんな東海大菅生のシーズンオフ期間の練習を取材した。
今はトレーニングの時間を多くとる
東海大菅生のキャンパスがあるのは東京都の西部に位置しているあきる野市。最寄りの駅から正門まではバスで10分程度に位置しているが、野球部が練習しているグラウンドはそこから更に急な坂を5分以上歩いたところに位置している。野球部の練習でもこの坂道を使うことは多く、この日もウォーミングアップのダッシュが行われていた。
チームを率いる若林弘泰監督は中日でも投手としてプレーした経験を持つ。2009年4月に監督となり今年でちょうど10年目となるが、シーズンオフの期間の取り組みについては就任当時と考え方が変わってきているという。
「以前はどちらかというと冬の期間でもボールをどんどん使っていわゆる『野球』を多くやっていました。でもそれだとどうしても身体が大きくならない。だから今はトレーニングの時間を多くとるようにしています。だから11月の中旬からシーズンが始まる前まで強度を保ちながらトレーニングをしています。
また、できるだけトレーニングは16時〜18時半に終わらせて食事を摂る時間を早く確保する。ボールを打ったり自主トレをしたりするのは20時以降。そうすることで身体が大きくなって、結果もついてくるようになりました。
あとトレーニングの結果は数字で見えることが大きいですね。そのことによって選手の意識はだいぶ変わったと思います。競い合ってやるようになりました」
これをやりきれないなら野球部員として認めない
身体を作ること以外にもシーズンオフの期間に強化していることがあるという。それが12月下旬と年明けの二回にわたって行われる冬合宿だ。
「12月はテストもあってどうしても追い込む期間が少ないんですね。だから年末に追い込もうということで合宿を始めました。ただそれが終わって休みに入ると、気持ち的に抜けてしまうなと思ったんです。だから12月と1月の二回に分けて行うようにしました。
この合宿の目的は精神的に追い込むことです。だから走るメニューが多くなる。少し離れたところに都内でも最大の広さがある西多摩霊園という墓地があるのですが、そこで走り込みます。かなりのアップダウンがある800メートルのコースを3分以内で走って1分休んでというのを10セット。西多摩霊園までの5.5kmくらいある道も走っていきますから相当きついですよ。
でもこれをやりきれないなら野球部員として認めない、メンバーにも入れないということははっきりと言ったら脱落者はほとんど出なくなりました。今度の3年生になるメンバーは冬合宿が終わってほっとしていると思いますよ(笑)。でも気持ち的に抜けてしまうといけないので、またどこかのタイミングでやろうと思っています」
最近ではやみくもに走れば良いわけではないという風潮もあるが、精神的に追い込むことは少なからず必要だというのが若林監督の考え方だという。また当然ただ走るだけではなく、走るフォームも重要だというのが若林流だ。
「ただ足が速ければいいというわけではないですが、特にピッチャーは走り方が良くなるとフォームも良くなって、投げるボールも良くなることが多いです。うちから八戸学院大に行った高橋優貴というピッチャーがいるのですが、最後の冬はこっちから見ていてもスーッときれいに走るなと思うくらいだったんですよ。高校の最後は故障していましたが、大学に入ってぐんと伸びて、今では150キロ以上投げるようになっています。
あと冬の練習は故障が怖いと言うんですけど、影響しているのは気持ちの部分が大きいと思います。先ほど話した合宿もそうですね。休み明けに厳しい練習があると分かっているから、心構えが変わってくる。3年前にセンバツに出た時の冬も結構追い込んだんですけど、気持ちに張りがあるからメンバーの選手は誰も故障しませんでした。ただ長時間練習すれば良いわけではないですが、追い込む時期を作ることなので気持ちを緩めさせないような取り組みは必要だと思います。ただ苦しいことは当然なので、そんな中でも競い合ったりするような工夫はしていますね」
次回「元プロ投手の若林監督の投手育成論「とにかく低めに投げること」」
(取材・撮影:西尾典文)
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