強豪高校のオフトレ、オフ練習レポート。今回取材したのは2013年夏に高橋光成(現西武)を擁して甲子園優勝を果たした前橋育英。今年も春夏連続で甲子園に出場しており、関東でも屈指の強豪チームである。毎年のように好投手を輩出し安定した強さを発揮している前橋育英の12月の練習を取材した。
体力強化を図りつつ、寒い時期でもボールは使う
近年安定した成績を残している前橋育英。チームを率いるのは日大藤沢でエースとして活躍し、社会人野球のいすゞ自動車では4年目から野手に転向し13年間プレーした経験を持つ荒井直樹監督だ。そんな荒井監督にまずこの時期(12月〜1月)の練習について重視している点をうかがった。
「基本的に寒い時期でもボールは使うようにしています。自分の現役時代は走ることが多くて春になると体力はつくのですが、どこか感覚がずれているような感じがしていました。だから今の時期でも早く練習を始められる水曜日はスポーツコースの3年生と紅白戦もやっています。そうは言っても体力面の強化も必要ですから、ウエイトの回数は増やしますね。シーズン中は週に1回ですが秋の大会が終わると週2回に増やし、12月からは週3回になります。
あとはグラウンドの外周が900メートルあるのでタイムを決めて走ることもやります。これまでも色々なことを試しましたが、うちの野球のベースは投手を中心にしっかり守るということと、攻撃面では足を使うという点です。バッティングはどうしても相手投手に左右されるので当てにできないですが守備と走塁は自分たちの意図通りにできる確率が高いですから」
荒井監督がこだわる投手育成の3つのポイント
今年甲子園に出場したチームも4人の140キロを超える投手を擁し、夏の群馬県大会は6試合でわずか9失点。新チームも県大会の準々決勝で敗れたものの、4試合で4失点とチームの目指す投手を中心とした守りについてはさすがという数字が残っている。では荒井監督が重視しているピッチングはどんなものなのだろうか。
「フォームについてはそんなにいじらないですね。ポイントは真っ直ぐ立つ、できるだけ横を向いたまま体重移動する、(投げる時に)肩を入れ替えるの三つです。他のことでもそうですが色々なことを気にしすぎると逆効果になると思うので、ポイントは絞るようにしていますね。重要なのはまず真っ直ぐ立つことで、そのためには何が必要か、どんな練習をすれば良いか、という風にそれぞれのポイントから派生して考えるようにしています。
あとはよくやるのは40メートルくらいの遠投とバッティングピッチャーです。40メートルくらいの距離を低い軌道ですーっと伸びていくようなボールを投げるには良いフォームではないとできません。またバッティングピッチャーはどう投げればどこにボールが行くのか、どんなボールを投げれば打たれるのか、逆に打たれないのか、ということを学ぶことができます。ブルペンでのピッチング練習よりバッティングピッチャーを多くやりますね。そういう意味ではただバッターに打たせるのではなく、ピッチャーとしての練習の要素が強いと思っています」
ボールの縫い目をしっかり見てプレー
守備については走者をつけての実戦的なシートノックを行うことも多いという。守備、走塁の両方のレベルアップを図ることが狙いだそうだ。この日は時間の都合で走者はつけなかったものの、投手もマウンドに入り実戦を想定したノックが行われていた。ここにも荒井監督ならではの狙いがあるそうだ。
「守備って全員が動かないと成り立たないんですよね。絶対に一人だけではなできない。生きていくことも同じだと思います。一人だけでは1日たりとも生きられないじゃないですか。だから全員で守ることが重要だと思っています。
あとは集中力を高めるために『ボールの縫い目をしっかり見てプレーしよう』ということも言ったりしますね。速いボールなんかは実際に縫い目は見えないと思いますが、それくらいの気持ちで集中してやろうという意味ですね。常にここ一番の一球、甲子園がかかった一球だと思って縫い目を見るくらいの気持ちでやれば疎かにならないじゃないですか。選手に言うだけじゃなくて、自分もノック打つときにそのくらいの気持ちでやったらミスショットが少なくなったという話もしたりします」
日が落ちてどんどん気温が低くなる中でも一球に対して全員が声をかけて取り組むシートノックが印象的だった。後編はバッティング、走塁練習についてレポートします。(取材:西尾典文、撮影:西尾典文、編集部)
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