
過去10年で春夏合わせて8度の甲子園出場を果たしている関東一。この数字は日大三の7回、早稲田実の5回を上回り、東京の高校では最多である。またこの期間に山下幸輝(国学院大→DeNA)、中村祐太(広島)、オコエ瑠偉(楽天)と三人のプロ野球選手を輩出しており、まさに勝ちながら育てられるチームと言えるだろう。そんな関東一を率いる米澤貴光監督に現在強化しているポイントをうかがい、12月の練習を取材した。
北総鉄道の西白井駅から徒歩で約20分。築年数の浅い戸建て住宅が立ち並ぶ新興住宅街の中に関東一の野球部グラウンドはある。校舎は約20km離れた都内の江戸川区にあるため野球部員は授業が終わると電車と自転車でグラウンドまで移動して練習している。
関東一ほどの甲子園常連校となると厳しい規律によって管理されているのでは?という先入観を持っていたが、グラウンドの雰囲気に緊張感はありながらも、選手の表情からは時折笑顔が見られる意外なものだった。もちろん選手は真剣に練習に取り組んでいるのだが、それに対して叱咤するコーチや他の部員の声にも棘を感じないのだ。そのことを米澤監督に聞いてみたところ、今のような方針になるきっかけがあったのだという。

「今振り返ると監督になった当初(2000年)は今のような雰囲気ではなかったですね。目いっぱいやらせて目いっぱい教えてという感じだったと思います。でもずっと帝京高校さんに勝てないことが続いて、何かを変えないといけないと思うようになりました。このままいっても差が埋まらないなと。そんなこともあって最後にやるのは選手なので、選手がいかにやる気になるかということを考えました。
簡単に言うと選手をもっと信じるようになりましたね。自主性という言葉で選手任せに野放しにするのとは違いますが、自分も選手と一緒に歩み寄ってやろうと。特に冬場は体力的にきつい練習が多いので、その中でつまらなくならないようにしようと考えてやっています。きつい練習でも選手自身が抜こうと思えば抜けると思うのですが、そうならないようにしていくのがこっちの役割だと思います」

米澤監督の前に話を聞いた宮田蒼太キャプテンと石橋康太捕手からもやらされるのではなく、いかに自分で自分を追い込んで練習できるかということが重要と話していたが、チーム全体にその考えが浸透しているようだった。ドラフト1位でプロ入りしたオコエ選手も2年の冬から3年の春にかけて大きく飛躍した選手である。
しかしこの秋に発足した新チームは東京都大会の2回戦で早稲田実に敗退。2013年春から14季連続でキープしてきたベスト8以上の成績も途絶えることとなった。勝ち続けてきた先輩を見てきた代だからこそ感じる課題もあるそうだ。
「今のチームの選手はうちが甲子園に出ているのを見て入ってきてくれた選手達ですが、入学してすぐまた夏の甲子園にも出たのを見て、普通にやれば勝てると勘違いしている部分があると思うんですね。勝手に自分たちは強いと思ってしまったところがあると思います。これで3季連続で甲子園を逃しましたし、秋は久しぶりにベスト8にも残れなかった。そこまで飛びぬけた選手がいるわけではないですし、やっと自分たちの立ち位置が分かったのではないかと思います」

チームとして力が足りないということは米澤監督の感覚だけではなく、実際にデータとして裏付けられたものもあったのだという。3か月に一度、50m走、30m走(50m走の際の30m時点のタイム)、1500m走、遠投、立ち幅跳び、握力、スイングのヘッドスピードといった選手の運動能力やプレーに関する数値を計測しているそうだが、今年のチームは今までに比べて全体的に劣っていた部分が目立つ結果だったそうだ。(取材:西尾典文、撮影:編集部)
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