夏バテ予防に始めた補食が効果を生んだ
身体作りについてもこだわりがあった。神村学園時代に寮生活を含めた食事改革を行い、一定の成果を出すことに成功していた鬼塚監督は、通いの選手たちの場合はどうやったら食の意識が変わり、勝利につながるか。考え、始めたのが6月からの「補食」だった。
「身体作り、体重アップはもちろんですが、1番の目的は夏バテ防止と、ケガ予防でした。気温がだんだん上がってくる時期、選手たちのお弁当を見ると、コンビニでざるそばを買ってきたり、300円くらいの小さい丼モノ弁当を買ってきたりと偏りがありました。そこで、まず全員で補食を食べて、体重が減るのを防ごうと。学校の食堂にも協力してもらい、練習前の15時に、茶わん1杯、約500グラムのご飯に生卵やふりかけをかけて全員で食べることにしました。食の重要性は食トレ専門家のセミナーで全員がインプットしていたので、自分たちで考えて行動できた。自宅での食生活も変わりました」。最もモチベーションの上がる6月に敢えてスタート。「新しいモノ好き」な選手たちのヤル気に火をつけた。
主将の阿部剛大選手は「始めたころは本当に効果があるのかな?と思ったけど、去年は夏に体重が5キロ減ってしまったのが、今年は減らなかった。福岡大会で足がつったり、熱中症になる人が一人もいなかったことも補食のお陰だと思いました」と話す。他にも「強化食と補食の食トレで打球が伸びるようになった。疲れも早くとれるようになった」(三浦慧太選手)、「補食を始めてから、食の意識が高まって、家でも夜に山かけご飯を食べるようになった」(柴田仁魁選手)、エースの斉藤礼選手も「トータルで3キロくらい体重が増えた。チームで取り組んだので、次第に習慣化されて食べることが当たり前になっていった」と効果を語った。選手の多くは「体重が増えても、動きのキレは変わらなかった」と喜んだ。
食べることの重要性を知った選手たちは、甲子園でも食欲が落ちず、体重維持も成功し、北照戦で勝利を手にすることができた。2回戦の大阪桐蔭戦は4–10で敗れたが、森島渉選手、阿部選手が根尾昂投手から本塁打を放ち、速球に打ち負けないパワーを見せた。
「采配をしていて、力の差も感じたし、足りない点が明確になった。強豪校の立ち振る舞いを見たことも、大きな財産になりました。この経験をこれからどう活かすか。それが今後の課題ですね」。
補食は新チームになっても続けている。現チームは先輩たちから良いものを引き継ぎ、新たな「沖学」の伝統を作ろうとしている。一冬越えて身体がどう変わっていくのか。春の進化が楽しみだ。
甲子園の思い出
大会前から「大阪桐蔭と対戦したい」と話していた選手たち。試合に向けて宿舎での生活を引き締め、1回戦の北照戦に勝利した。敗れたが大阪桐蔭戦の健闘にスタンドからは万雷の拍手。「ありがとう」の声が響いた。
管理栄養士の食事チェック
牧田涼太郎選手(2年)のお弁当。メニューはひじきとゴマのふりかけご飯、鶏むねのからあげ、青のりの卵焼き、オクラのおかか和え、ちくわと魚肉ソーセージ、塩さば、いんげんとパプリカの豚肉巻き、大根の煮物、梨。沖学園高校DATE
所在地:福岡県福岡市博多区竹下2-1-33学校設立:1958年
直近の戦績:
2018年夏・南福岡大会優勝、全国高校野球選手権2回戦
2018年春・県大会2回戦(初戦)
2017年秋・県大会4回戦
(文・写真:食トレマガジン#7より)
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