カラダづくり

コロナ禍で食トレも工夫日々の意識向上で甲子園へ〜石橋高等学校(栃木県)〜

2021.7.24

昨年秋は栃木県内の絶対王者である作新学院高校を破り、4年ぶり2度目の関東大会出場を果たした石橋高校。県内でも有数の進学校ながらここ数年安定した成績を残している理由を探るべく、その食トレ、練習を取材した。


同じ進学校が刺激に 食トレは成果が出やすい

県内でも有数の進学校として知られる栃木県立石橋高校。全国から多くの進学校が出場する全国高等学校クイズ選手権(通称・高校生クイズ)では第14回大会で優勝も果たしている。しかし野球部に関しては目立った成績を残してはおらず、県大会で早々に敗退する年が大半だった。

そんな石橋高校が大きく変わるきっかけとなったのが2016年4月だ。前任の宇都宮北高校で関東大会出場経験もある福田博之監督が赴任。その福田監督が重視したのが食事の見直しによる体力強化だった。

「宇都宮北時代に同じ県立の進学校の日立第一(茨城)と練習試合をしたときに、明らかに身体つきが違ったんですね。そのときのチームは夏の茨城大会でも準優勝するくらい力があったのですが、聞いてみると専門家の指導を受けて食トレをしているとのことだったので、早速うちも採用しようと思った矢先に石橋高校に異動になりました。ただ、石橋高校も宇都宮北高校や日立第一高校と境遇はよく似ていますので、まずはやってみようということで、赴任した年から取り組んでいます」。


故障予防、身体作りも重要視。ストレッチの時間も設け、練習中のケガを防止する。


県立高校ということで全員が自宅から通っており、保護者の負担も当然大きくなるが、福田監督が幸運だったと語るのがすぐに結果が出たことだったという。

「幸いなことにその秋に関東大会に出ることができて、選手だけではなくて保護者も効果を実感できたというのは大きかったです。勉強も大変な学校なので、しっかり栄養を摂ることが集中力アップに繋がって、勉強にも良い効果があると思いますということも最初に話したりしていました」。

コロナ禍による影響も秋は想像以上の快進撃

昨年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で春夏の甲子園大会は中止に。石橋高校だけの話ではないが、緊急事態宣言の出た期間は野球部としての練習も当然行うことはできなかった。そんな期間を乗り越えて秋には作新学院高校を破り栃木県大会で準優勝を果たしているが、福田監督としては決して新チームに手応えがあったわけではなかったという。


グラウンドは決して広くないが、限られたスペースを活用して打撃練習にも取り組む。

「昨年の練習ができない期間、3年生には頻繁に連絡していましたが、下級生を気に掛けることはなかなかできませんでした。秋は正直1つか2つ勝てればいいかなと思っていましたが、キャプテンでキャッチャーの小林(到)が投手陣の良さを上手く引き出して失点を抑えられたのが大きかったと思います。改めて能力があるのだなと、こちらも気づかされたのが昨年の秋でしたね」。

コロナ禍の影響は食トレについても変化を及ぼしたという。感染リスクを少しでも減らすため、練習後の補食は卵かけごはんから全ておにぎりに変更。現在は希望者のみ自分でタッパーを用意して卵かけごはんも再開しているとのことだったが、部員の大半はおにぎりのままだという。

この補食を準備するのが3学年で7人いる女子マネージャー。当番制で2人が対応している。取材当日の担当は3年生の工藤叶実さんと1年生の百武裕美さん。24合のお米を炊き、おにぎりに入れる味付け卵を作り、ラップを調理台に広げて手際よく準備していた。これだけの量の補食を毎日用意するのは大変なことである。

練習後の補食は女子マネージャーが準備。手際よく全員分のおにぎりを用意する。


3学年合計7人の女子マネージャーも貴重な戦力。さまざまな役割を分担してこなす。

「練習直後にすぐ栄養を摂取することが重要なので、頑張ってもらっています。マネージャーたちの働きには本当に頭が下がりますね」。
と福田監督も話していた。

効果の差は意識で変わる常に実戦をイメージして


秋は関東大会にも進出したが、春は2回戦で敗退。日々の練習にも食トレにも中だるみ感があったと福田監督は話す。

「結果はある程度出ていますが、私立に比べると身体作りもプレーもまだまだです。今は食トレもトレーニングもどの学校も取り組んでいますから、そこで差をつけるにはやっぱり細かいところまでの意識だと思うんですよね。一つ一つの練習、1回1回の食事、それをいかに試合に繋げて考えられるか。うちみたいな学校は特にそこにこだわるしかないですね」。

この日も限られたスペースで守備中心の練習を行っていたが、福田監督からは常に集中を促す指示が送られていた。2016年秋、そして昨年秋と栃木の頂上はあと一歩のところまで来ているが、それを乗り越えるために大事なのは日々の積み重ねだということが感じられる石橋高校の取り組みだった。


取材当日は守備中心の練習。1球1球を無駄にせず、集中する意識を持って取り組む。


野球部・監督
福田 博之 (ふくだ・ひろゆき)

1965年生まれ。栃木県出身。真岡高校、宇都宮北高校で監督を務め、2016年4月に石橋高校に赴任。2016年秋、2020年秋と2度に渡りチームを関東大会出場に導いている。

空腹にしない意識で大幅な体重増に成功


3年・外野手 石川慶悟さん。
Q.食トレをして変わったことは?
練習前におにぎりを食べるなど、常におなかが空かないようにというのは意識しています。あと栄養素についても考えて食べるようになりました。

Q.食トレで苦労したことは?
食べることは苦ではないですが逆に授業中によくおなかが空きます。牛乳とオレンジジュースは夜に必ず飲むように気をつけています。

Q.食トレ効果だ!と実感したことは?
2年生になってから明らかに身体が変わって、打球も飛ぶようになりました。身体が大きくなったことで、プレーに対する自信もついたと思います。


食トレは中学時代から意識食事ではご飯にこだわって


Q.日々の食事で工夫していることは?
中学時代から白米が大事と聞いていたので、3食必ずご飯にしています。あと朝は時間もないので、食べやすいように納豆と卵を混ぜたご飯にしています。

Q.お弁当で工夫していることは?
蓋を開けたときに食欲が出るように赤、黄、緑と彩りは気をつけています。また、ビタミン補給のためにオレンジジュースも必ず持たせるようにしています。

Q.食トレをして感じたことは?
1年のときは先輩と比べると本当に細くて食事の重要さを実感しました。夏まではあと少しですが、ケガなく100%の状態でプレーしてもらいたいです。



小林 栄さん(キャプテン小林到くんのお母さん)


石橋高等学校
学校設立:1924年
所在地:栃木県下野市石橋845 
直近の戦績
2019年秋・栃木県大会3回戦
2020年秋・栃木県大会準優勝
2021年春・栃木県大会2回戦


(取材・文/西尾典文  撮影/GonFoto河上)


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