学校・チーム

【大手前高松】学習も野球も食トレも「自ら学んで答えを出す」

2018.4.16

2010年、47年ぶりに硬式野球部を復活させた大手前高松。以来メキメキと実力をつけ、四国の強豪校と甲子園の出場権を争うチームになった。甲子園という高き山の頂を目指すなか、初戦敗退した一昨年の秋にチーム平均体重が63 kgしかなかったことで導入を決意したという大手前高松の食トレに迫った。


強制しない食トレで切磋琢磨し結果を出す

大手前高松は県内でも有数の進学校。学業との両立のために学習所が併設されている高台のグラウンドで、野球部員たちは「文武両道」を掲げ、大学進学を見据えながら、甲子園を目指して日々練習に励んでいる。

言われたことをただやるのではなく、自分たちで考えて取り組んでいき、そのなかで修正を行って、結果を出す。アクティブラーニングの流れにシフトしつつある教育現場で、「僕は食事も野球も同じだと思うんですよ」と監督は話す。食トレを強制はしない。結果は求めるが、方法はいくつもあるからだ。家族と相談してオリジナルでやるのもいいし、専門家のサポートを受けるのもいい。選択することで責任や使命感が生まれると監督は考える。

「ただ、年に一回の食トレセミナーは保護者も含めて全員参加。食事に関する基本的なところを毎年全員で確認します。それぞれのやり方でお互いに切磋琢磨して、それが結果的にいい効果になっていると思います」。

部員数は3年生18人、2年生19人の合計37人。

食事に対する取り組みは以前から行っていたが、本格的な食トレを導入したことで薄ぼんやりとしていた部分が明確になった。時期や状況に応じた具体的なアドバイスをくれたり、疑問や要望に的確に返事をしてくれる専門トレーナーの存在は大きかった。

まず部員たちの意識が変わり、学校とグラウンドを行き来するバス移動中の間食が当たり前になった。夏の大会前の体重減少に歯止めがかかり、昨年はいい状態で大会期に入れた。チームのコンセプトである「機動力」という点においてもスイングスピードやスチールタイムのチーム平均の向上が明確に数値となって現れている。

「現状維持は衰退」の思いで数値に向き合う

常に監督の傍にあるタブレットPCには、さまざまなデータが詳細に記録されている。打率、走塁、OPSなど……。ITを駆使し、数値化されたデータをもとにさまざまな項目で選手の評価をつけ、グラフ化し、選手ごとに良い点悪い点、強化すべきポイントなどがすぐにわかるようになっているという。練習の様子を動画撮影し、部員たちに共有することも。「精神論ももちろん大事なんですが、数値で結果は出ます。部員たちには常にやりたい野球に対して必要なことを明確にするよう求めています。それが数値に命を吹き込んで行くことになる」と監督は語る。

状況を設定した実戦形式の練習。全ての練習を通して、プレーで気になる点があれば即座に声をあげ自主的に話し合う姿が見られた。
ノックでは返球までのタイムを読み上げ、数値を声に出すことで常にスピードを意識。
練習中もさまざまなデータを計測しタブレットに記録していた。

一昨年の秋、チーム平均体重63キロから始めた食トレ1年目はとにかく体重を追いかけた。絶対的な体重量が足りなかったからだ。最低でも1か月で300グラム増やそう、と決めて取り組んだ。フィジカルの部分だけを見てくれる人がいることで、試合での結果が出ない焦りの中でも、一つ一つ階段を上っている実感があった。計画的に夏までのビジョンを持ち、スタッフやトレーナー、選手たちと共有しながら前へ進めたことが財産になったと監督は語る。手は届かなかったが、甲子園をかけた土俵までは進めた。2年目の今年は質を求め、アプローチを変更。除脂肪体重の増加に取り組んでいる。そして、昨年手が届きそうで届かなかった甲子園を目指す。

野球部監督 山下 裕 (やました ゆたか)
1980年4月11日生まれ。香川県出身。高松第一高校から大阪体育大学へ進学。初芝富田林高校軟式野球部監督を経て、大手前高松高校軟式野球部監督に就任。その後、硬式野球部監督に。

管理栄養士のお弁当チェック

「温かいご飯を食べたいとき、ランチジャーはおすすめですが、ご飯の容量が難点。ジャー2つはいい工夫ですね。おかずは別容器でたっぷりと。傷みやすさも軽減され、安心です。クリームシチューはタンパク質と野菜、そして乳製品がとれる優れたおかずです」。
寒い季節にお味噌汁(左)やシチュー(右)など温かい汁物が嬉しい

Close Up Player:内田崚太くん(3年/外野手)

夏の練習がきつく食欲が出ないなかで食べることに苦労したという内田くん。毎日起床時、練習後、就寝前の3回体重を計り、体重の減少があったときには「今日はこれだけ落ちとる」と自分を奮い立たせ、次の日までにしっかり体重を戻そうと意識を持って取り組んだことで乗り越えた。

食トレを始めてケガをしなくなったこと、食べて太るかと思っていたが、トレーニングにエネルギーが使われて成果が上がり、筋肉量の増加や動きが良くなってきていることを実感しているという。「以前は気にしたことのなかった食べるものやタイミングにも今は敏感です(笑)。身体にいいと聞いたものはお母さんにリクエストしてつくってもらいます」と語ってくれた。

 入学時現在
身長175cm177cm+2cm
体重65kg75kg+10kg
体脂肪率10%15%+5%

Close Up Supporters:保護者の皆さん


選手のお母さんたち

子どもたちの意識の変化が一番の効果だと実感

「最初に食トレの話を聞いたときは大変そうやと思ったけど、ほんまに大変! 今は慣れたけど、最初の一年は苦労しました」と話し出してくれたお母さんたち。身体を大きくすることより、ケガをしにくくなるという点に期待したという意見や、好き嫌いが多い子にいかに食べさせるかという点で専門家に頼んでよかったという意見も。今では子どもたちの意識が変わったことで、嫌いな食べ物が食べられるようになったり、やめられなかったスイーツを断てたり、練習内容に応じた食事メニューのリクエストも上がってくるようになり、それぞれに効果を実感している。

他の部員のお弁当を見て「こんなメニューなら苦手な野菜も食べられそう」という情報がレシピのマンネリ化からのいい脱却法にもなっていたり、「苦手な野菜や果物はジュースにする」「肉巻きおにぎりならご飯が食べられる」などの工夫も聞かれた。「子どものためなら一生懸命やってくれる保護者の皆さんなので、子どもたちにはそこに甘えないで欲しい」と監督が話していたが、食事を通して親子間でしっかりとコミュニケーションをとれているようだ。

大手前高松高等学校DATE
所在地:香川県高松市室新町1166
学校設立:1957年
主な戦歴:2017年秋・香川県大会準優勝・四国大会ベスト8、2017年夏・香川大会ベスト4、2017年春・香川県大会2回戦

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