学校・チーム

【静岡高校】食トレがキーになる公立強豪校のチームづくり

2018.4.3

静岡県内有数の進学校として知られる県立静岡高校。春夏を通じて41回もの甲子園出場実績がある強豪校でもある。そんな静岡高校野球部にとって食トレは特別なことではなく、当たり前の取り組みとして定着。食事による身体づくりは、チーム力アップには不可欠だったのだ。


周囲の期待を胸に一歩ずつチーム改革

静岡高校(以下、静高)野球部を率いる栗林俊輔監督が就任して10年。春夏6回の甲子園出場を果たし、名門復活の礎を築いた監督は、自身を「野球人としては凡人でセンスがない」という。謙遜に聞こえるこの言葉の意味を、こう続ける。

「就任2年目の夏、静高野球部の120年以上の歴史の中で、初めて一回戦コールド負けをしてしまって。もう大変でしたね。何よりかわいそうなのは選手たち。指導者の責任を痛感しました」。

伝統校だからこそ、静高の監督に対する周囲の期待値は高い。栗林監督は選手を甲子園に導いて責任を果たそうと誓いながら、仮に出場できなかったとしても、基本を重視した強固なチームの土台をつくりたいと考えた。食トレを始めたのもその一環だった。

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部員数は3年生16名、2年生14名。

「『心技体』を磨くには、素直に指導を受ける心をつくり、トレーニングで技術を磨き、食事で身体をつくる必要があります。高校野球部での食事といえば、昔から3合飯を食べろなどと言われていましたが、いくら白米をとっても筋肉にはなりません。それに、体型が異なる選手たちに同じ量のお米を食べろというのも乱暴すぎる。だから、まずは白米を食べることと筋肉をつけることとを切り離し、選手がそれぞれ自分に必要な量のごはんや栄養を知ることが大切だと思いました」。

静高で取り組んでいる食トレは、選手がそれぞれの身長・体重・体脂肪から自分の理想体重を算出し、それを実現するための食事をとり、足りない栄養素を強化食で補完するというもの。その成果ははっきりと表れたそうだ。

富士山を望む風光明媚なグラウンド。

「ほとんどの選手が、2年生になる頃には身体つきが変わります。体の中から変わることでケガが減り、風邪も引きにくくなる。うちの選手たちは自尊心が強く、上手くなったり強くなったりするためなら、練習でも食事でも前向きに取り組みます。最初は理屈で理解してやっているのかもしれませんが、効果を感じてくると自ら行うようになりますね」。

身体が変わると自分に自信が生まれ、集中力がつき、疲れにくくもなるという。勉強にもプラスになっているのではないかと栗林監督は話す。

「練習も食事も特別な指導はしていませんが、選手たちが何を求めているかを知って、それに応えることが大切だと考えています。『基本が大事』というのは、技術面はもちろん、身体面も同様です。選手たちの現状を見極めて、指導者が適宜適切な手を打つ必要があると思います」。

選手ひとりひとりに合わせた指導を行うために、前任校から採用しているのが「野球日誌」。その日の反省点や明日へのテーマなどを選手たちが書き込むものだが、選手の成長の記録でもあり、また、さらなる高みへと向かうための指針にもなっているようだ。

「部長の大石先生と交互に読んでいて、これを見ると選手が今何を考え、どう過ごしているかなど、さまざまなことがわかります。選手たちの言葉を参考に、その子に合った指導ができるように心掛けています」。

(写真右)甲子園という舞台で実力を遺憾なく発揮するため、常に実践を想定したタイムスケジュールで練習を行う。
(写真左上)基礎的な練習の積み重ねと正しい食トレで、一年後には選手の身体つきは歴然と変わるという。
(写真左下)バッティングは同部OBで元プロ野球選手の小田義人さんが外部コーチとして指導。的確な教えによりチームの打撃力も向上中。

公立校ながら、きめ細かな指導が際立つ静高。栗林監督や大石部長の指導に加え、食事については保護者の協力もあり、チーム力は少しずつ、確実にレベルアップしている。それは、ここ数年の戦績を見れば明らかだ。

「高校生は精神的にも技術的にまだまだ未熟で、いいときと悪いときの振れ幅が大きい。でも、トーナメント戦では負けたら終わりです。悪い面が出ても負けないようにするには、個々の選手、そしてチームの力を底上げして、ダメなときのレベルを上げておくことが重要。普段の練習では、長所を伸ばしつつ短所を直すことで、ベースアップを図っています。ですが、試合になったら短所は気にしません。勝負のときは、長所でどれだけ相手と戦えるかにかかってきますから」。

野球部の部則には『我々は目標を甲子園優勝とする』という一文がある。その目標が現実に変わる日はもう目の前かもしれない。

野球部・監督 栗林 俊輔 (くりばやし しゅんすけ)
1972年9月8日生まれ。静岡県磐田郡豊田町(現・磐田市)出身。磐田南高から筑波大に進学。卒業後は清水南高に赴任し、磐田北高、浜松工高で監督を務めた後、2008年に静岡高の監督に就任。10年間で春夏6回の甲子園出場を果たし、名門復活の礎を築く。

管理栄養士のお弁当チェック

下のお弁当はごはんにかけた“ごま”に注目! ごまには、ミネラルがバランスよく含まれていているうえに、アントシアニンという色素の効果で筋肉疲労にも効果的です。上は、お弁当だとなかなかバリエーションがでない大豆製品(豆腐)を上手に取り入れています。ごはんも進みそうですね。

上/小麦アレルギーの藤田大和くん(3年)のお弁当はすべてお母さんが手作り。下/主将・黒岩陽介くん(2年)のお弁当は毎食野菜ジュース付き。白米は1日2kgでお弁当には500gを持参。

Close Up Player:草薙 誠くん(3年/投手)

食べることは好きなのに太りにくい体質。高校での硬式野球部入部を前に、中学の部活引退後からたくさん食べるようにしたという草薙選手。「高校で本格的な食トレを始めて、毎日0.1キロずつ増やそうと考えました。最初はなかなか体重が増えなくてモチベーションを保つのが難しかったのですが、慣れるにつれて食べられる量も体重も増えていきました。2年生になった頃から投球にも違いを感じ始めて、球速が上がり、いい球が行くようになった。肩ひじが強化されて、ストレートの質とキレがよくなりましたね。また、トレーニングとの相乗効果で足腰も強くなり、身体があまりブレなくなって、厳しいバント処理もうまくできるようになりました」。

 入学時現在
身長177cm178.7cm+1.7cm
体重65kg76.5kg+11.5kg
体脂肪率12.2%17.4%+5.2%

Close Up Supporters:保護者の皆さん

当番で炊き出しを実施し温かいご飯を提供

部員たちのチームワークのよさを象徴するかのように、とても仲が良い保護者のみなさん。お互いを下の名前で呼び合い、一緒に野球部を盛り上げる。食事についての情報交換も盛んな様子。「お弁当作りで気をつけているのは、食材をバランスよく入れること、そして献立をマンネリにしないこと。勤務先が保育園なので、その給食からヒントをもらっています。野菜ジュースは必ず持たせていますよ」と話すのはキャプテンの黒岩陽介選手の母・千夏さん。また、チーム内でも成長著しいと噂の小林晃輝選手の母・綾子さんは「息子はもともと食に興味がなく、身体もガリガリ。入部して半年経った頃からようやく食トレが身になってきました。補食用に200グラムのおにぎりを毎日6個持たせていて、具材で塩分をとりすぎないように減塩のものを選んでいます」と母の愛をのぞかせていた。

静岡高校DATE
所在地:静岡県静岡市葵区長谷町66
学校設立:1878年9月2日
主な戦歴:2017年夏・静岡大会ベスト4、2017年秋・秋季東海大会優勝、2017年秋、第48回明治神宮野球大会ベスト4

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