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【高校野球で観察眼が生かされたプレー】2014年|敦賀気比(福井)×大阪桐蔭(大阪)

2018.4.16

第96回全国高校野球選手権大会 準決勝
敦賀気比(福井)×大阪桐蔭(大阪)

プロ野球に比べるとデータが少ない高校野球。しかし、それでも観察眼を発揮できる場面というのはたくさんある。ここでは高校野球で実際にあった観察眼が生かされたプレーをタイムリーでもおなじみの高校野球データライター西尾典文氏に紹介してもらった。


【戦評】

強力打線を擁する両チームの対戦。初回に敦賀気比が5点をリードするが、大阪桐蔭もすぐさま反撃。2回に同点、4回に逆転に成功すると終盤まで攻撃の手を緩めず計15点を挙げて勝利。大阪桐蔭は続く決勝も制し、4度目の夏の栄冠を手にした。

観察眼で好投手を徹底解剖、クセを見破り大量得点

決して前評判はそこまで高くなかった敦賀気比は初戦の坂出商戦で16得点の猛攻を見せると、2回戦の春日部共栄戦は10得点、3回戦の盛岡大附戦では16得点と打線が大爆発。2年生エースの平沼翔太(現・北海道日本ハム)は4試合を投げ失点はわずかに4と好調を維持していた。対する大阪桐蔭は初戦の開星戦で序盤に4点を奪われるなど、決め手に欠ける苦しい試合が続いていたが、3回戦の八頭戦では16安打10得点をマークするなど徐々に調子を上げてきていた。

そんな両校の対戦は初回から大きく動き出す。1回表、敦賀気比は4連打で1点を先制すると、六番の御簗がライトスタンドへ満塁ホームランを叩きこむ。大会期間中の平沼の出来を考えると、5点のリードは大きなアドバンテージと思えた。しかしその裏、大阪桐蔭が3点を返すと、2回には二番峯本のツーランホームランで瞬く間に同点。3回に再びリードを許すものの、4回裏には一挙5点を奪い逆転に成功。平沼は6回途中まで投げ12失点で無念の降板。最終的には15対9という大味な展開となり大阪桐蔭が勝利した。

準々決勝まで見事なピッチングを見せていた平沼が完膚なきまでに打たれた要因にはある人物の鋭い『観察眼』があった。大阪桐蔭のコーチ陣は試合前に相手投手の映像を見て、タイミングのとり方など徹底した研究を行うことで知られている。そのコーチ陣が試合前に平沼のあるクセを見抜いていたのだ。それはセットポジション時のグラブの位置。平沼は横に変化するカットボールと、鋭く落ちるフォークを武器の投球スタイル。その二つの変化球の握りが、グラブの位置で微妙に変化していたのだ。このように能力の高い選手をそろえるだけでなく、試合前の準備を怠らず、相手投手のわずかなクセを見逃さない観察眼を持ったコーチをそろえていることも大阪桐蔭の強さの要因の一つといえるだろう。

実はこの試合には続きがある。翌年のセンバツの準決勝でも両チームは対戦しているのだ。この試合でも敦賀気比が1回表に松本の満塁ホームランで先制し、大阪桐蔭が追う展開となる。だが、平沼は前回見抜かれたクセを完璧に修正し、4安打完封勝利。悔しい思いをした相手にリベンジを果たした。クセを見破り、クセを克服し、さらにレベルアップする。高校野球のトップレベルの現場では、そのように目には見えない攻防が繰り広げられているのだ。

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