カラダづくり

【早稲田佐賀】正しい食の知識を得て創部8年目で甲子園出場

2018.4.19

早稲田大学の創設者・大隈重信の出身地、佐賀県にできた早稲田大学7番目の付属・系属校が早稲田佐賀だ。昨夏、創部8年目にして初の甲子園出場を決め、選手たちは憧れの聖地で躍動した。部員の約9割が寮生活で、野球と勉強を両立する日々。効率性を重視した練習と、野球部独自の食トレを取材した。


伝統あるWASEDA
砂浜の練習で身体づくり

江戸時代に唐津藩の城下町として栄えた唐津市。市のシンボルとなっている『唐津城』を眼前に臨むことができる早稲田佐賀。その住所のとおり、城内に校舎を構える文武両道の進学校だ。野球部のユニフォームは、早稲田大学とほぼ同じで、えんじ色でWASEDAと書かれ、左腕に佐賀の文字が刻まれる。昨夏の甲子園では、アルプス席に有名な『紺碧の空』の大合唱が響き渡った。初戦で聖心ウルスラ学園(宮崎)に敗れ早稲田大学の校歌である"都の西北"を歌うことはできなかったが、創部8年で掴んだ甲子園出場の切符に、全国のOB、早稲田ファンが歓喜したことは記憶に新しい。

グラウンドから近い唐津湾。7校目の系属校として甲子園出場を果たし、地元では「WASEDA-SAGA」の認知度が一気に高まった。

目の前に唐津城、歩いて5分の場所には西ノ浜海水浴場。絶好のロケーションは、ときに野球部の恰好のトレーニング場になると古賀一則監督は話す。
「今日は朝から雪が降っていたので、メニューを変更し、唐津城の階段登り(230段)と、ロードワークにしました。午後からは砂浜を使い、選手たちを鍛えていきます。階段トレは石段がいびつなので、股関節の可動と、普段使わない筋肉を使うことでバランス感覚が養われます。砂浜でのトレーニングは過酷で、下半身に効きますよ。練習時間が短いので楽しく集中することが大事です」。

厳しい勉強と野球の両立
食トレが部を支えている

野球部の約9割が寮生活を送っているが、けっして十分な練習時間があるわけではない。平日は17時から練習が始まり、終わるのは約19時。選手たちは寮に帰ると一般生徒と同じように、21時から23時までの自習時間を使って課題や試験勉強に取り組む。野球と勉強、同じバランスで高校生活を送りながら、個々の目標達成と、甲子園出場を目指している。

野球部だけが特別ではない。では部活動をしながら、一般生徒とほぼ同じ学校生活を送っているチームが、なぜ甲子園出場を果たすことができたのか?

その理由の一つに積極的な“食トレ”がある。古賀監督が導入の意図を語る。
「寮で出るバランスのよい食事は、1日約3000キロカロリーと計算されています。これはあくまで一般的な男子高校生の必要摂取カロリーです。でも、野球部はこれだけでは明らかに足りません。何かいいアイデアはないかと熟考した末に、強化食を取り入れようと提案したのです」。

学校から徒歩圏内の附設寮「八太郎館」で昼食をとる選手たち。1日3000キロカロリー計算で、おいしく、バランスのよい食事が食べられる。
朝10時に補食として食べる「どんぶり飯」。マネージャーが朝からお米を研いで、炊きたてのご飯を準備する。
「ビーチトレーニング」と呼ばれる名物の体力トレーニングは年間を通じて行われる。選手たちは悲鳴をあげながら砂浜をダッシュする。

野球部に必要なカロリーは約5000キロカロリーと言われている。大学卒業後、スポーツトレーナーとして働いた経験を持つ古賀監督は、栄養やコンディショニングについての造詣が深い。プロテインなどのいわゆるサプリメントだけでは補えない栄養素をどのようにとるかと考えていた。カルシウムや、ミネラルは、食事だけではなかなかとれない。そこでマッチしたのが強化食だったのだ。

指導をする未来に向け、蓄えるべき食の知識

1日練習の日は、朝10時に「どんぶり飯」を全員で食べることが習慣になっている。『お米をよく噛む』ことで得られる栄養や、食習慣も意識づけし、身体を大きくするという目標をどう達成させるか、チームで考え取り組んでいるという。食トレを通じ古賀監督が選手に伝えたいことは、未来に役立つ正しい知識だ。
「食べるか、食べないかを最終的に判断するのは自分自身。ただ、高校生の時点で正しい食の知識を知ることで、意識づけができるようになります。うちの選手たちは、勝ちたいという気持ちと同じくらい、将来指導者になりたいという気持ちが強い。正しい知識を専門トレーナーに教わり、しっかりと学ぶ。そして、知識だけに留まらず、自分の身体を通して実践するという経験を身につけて欲しいと願っています」。

食が人を育て、人が食を伝える。選手たちは食トレを通じ、今後多くの人に知識の連鎖を広めていくに違いない。

野球部・監督:古賀一則(こが かずのり)
1979年生まれ。佐賀県出身。鳥栖から福岡教育大へ進学。遊撃手でプレーしたのち、鳥栖工副部長、藤蔭(大分)部長などを経て、2010年同校に赴任。体育科教諭。

管理栄養士のお弁当チェック

「肉の下に野菜を引くことで、食べる工夫がされています。これで淡色野菜(サラダ)は十分。淡色野菜と緑黄色野菜の比率は、緑黄色野菜を多めにするとビタミンが多くとれますよ。果物(果汁100%オレンジジュース)と乳製品を付け加えるとさらにバランスがよくなります」。

敬遠されがちな野菜類もしっかり摂取。彩り豊かなお弁当。

Close Up Player:安在悠真くん(3年/投手)

背番号11をつけ、昨夏の佐賀大会で2年生ながら1完封含む4試合に先発した安在くん。テンポのいい投球と、絶妙なコーナーワークでチームを初の甲子園へ導いた。入学時は体重が50キロ台だったが、練習中の補食と、寮の食事で体重が10キロアップ。「寮に入ってから、風邪は1回しか引いていません。ケガや病気に強くなった気がします」と嬉しそうに話す。「夏の大会で連投できたのは、体力がついたおかげ。中学生のときは、好物のクレープやカルピスを毎日口にしていたけれど、食トレを始めてからは意識が変わり、甘いモノを食べなくなりました」。大きな意識改革で掴んだ甲子園出場。今年目指すのはもちろん悲願の甲子園1勝だ!

  入学時 現在
身長 168cm 168cm ±0cm
体重 59.2kg 71.4kg +12.2kg
体脂肪率 8.9% 16.6% +7.7%

Close Up Supporters:完備された施設での部活と寮生活


石田英喜さん(保護者会長)

「ここを選んで、良かった」

「保護者の役割は、指導者を通して、求められる支援をしていくことです」と石田さん。息子の康喜くん(3年)は食事面を含め規則正しい寮生活と文武両道の校風に憧れて入学。「練習後、すぐ温かい食事が食べられる。栄養の吸収もよいですし、空腹を我慢することもありません。生活全般をお任せできる寮長さん、寮母さんのご夫婦がいますので、何も心配いらない。ここを選んで良かったと思っています」。康喜くんは、寮生活のお陰で好き嫌いがなくなったそうだ。また、年末に帰省したとき、玄関の靴を綺麗にそろえる姿を見て成長を感じたとも言う。「最近は息子の身体がガッチリしてきました。補食をサポートしくれるマネージャーにも感謝ですね」。寮の食事と、補食で再び聖地へ!
「甲子園はみんなの夢。健康で安全に仲良く。悔いの残らないよう戦って欲しいです」とエールを贈った。

早稲田佐賀高等学校DATE
所在地:佐賀県唐津市東城内7-1
学校設立:2010年
主な戦歴:2017年秋・佐賀県大会1回戦、2017年夏・佐賀大会優勝、甲子園出場、2017年春・佐賀県大会1回戦

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