強豪校を指導する監督に過去の失敗や後悔を現在の指導にどう生かしているかを聞く企画。中央学院の相馬幸樹監督は前編で監督就任当時の失敗や、コロナ禍を経て感じたことなどを紹介したが、後編では前回に出場した甲子園での後悔と、6年ぶりとなる選抜高校野球への意気込みなどをお届けする。
悔いが残った逆転サヨナラスリーラン
2007年に中央学院の監督に就任し、2018年の選抜で学校として春夏通じて初となる甲子園出場を果たした相馬監督。1回戦の相手は百戦錬磨の馬淵史郎監督が指揮する明徳義塾だったが、試合中は十分な手応えを感じていたという。
「馬淵監督は言葉の使い方が上手くて、試合前に色んなことを言って自分のペースに持っていこうとしているのかなとは思いました。ただ十分に対策する時間もありましたし、試合中は自分たちのペースで戦うことができていたと思います。相手の先発投手もかなり飛ばしているのが分かったので、後半に勝負できるなと」
その言葉通り3点こそ先制されたものの中盤に1点を返し、8回には一挙4点を奪い逆転に成功。2点リードのまま最後の守備を迎えたが、ここで落とし穴が待っていた。ツーアウト一・二塁から逆転サヨナラスリーランを浴びたのだ。この場面で相馬監督は大きな悔いが残っているという。
「最後のバッターの場面でこちらからキャッチャーにサインを送ったんですが、そのサインにピッチャーが首を振って違うボールを投げて、それを打たれての逆転スリーランでした。キャッチャーの選手が試合の後に泣いていたんですけど、正直こちらとしてはサイン通りの要求をしなかったことに腹が立っていましたね(笑)。
ただ後から考えるとベンチからサインを出した時は絶対にそれで勝負するという決め事をしていなかったことが悪かったなと思い直しました。打たれて負けた責任をこちらが背負えなかったということもあります。そういう細かい優先順位までしっかり決めておかないと甲子園では勝てないんだなということを思い知りましたね」
その年の夏の甲子園でも済美と接戦を演じながら1点差で初戦敗退。甲子園初勝利はまたもおあずけとなる。それ以降は千葉県でも上位に勝ち進みながらなかなか勝てない日々が続いたが、相馬監督に焦りはなかったそうだ。
「力のあるチームもあって、あと一歩で勝てそうな試合も多かったので運がないのかなとは思いましたけど、だからといって若かった頃のように勝てなかったから猛練習をしようみたいなことはなかったです。毎年やり方は変えていますが、目標から逆算して何が足りないかを考えてそれを埋めていくという取り組みは一貫していますし、そういう流れは作れているかなと。一度コロナでそれが途切れたのは大変でしたけど、そのサイクルもまた戻せていると思いますね」