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【土浦日大】小菅勲監督|選手をよく観察、「できなかったこと」ではなく「できたこと」を言ってあげる

2024.3.1

現役時代は取手二で夏の甲子園優勝を果たし、監督としても下妻二、土浦日大を甲子園出場に導いた小菅勲監督。前編では若い頃の失敗から現在の指導に生かしていることを紹介したが、後編ではさらに昨年夏の甲子園で勝ち進めた理由などを聞いた。


「できなかったこと」ではなく「できたこと」を言ってあげる

記事前編はこちら→

昨年夏が監督して5度目の甲子園出場となった小菅監督。それまでの4回はいずれも初戦敗退と勝利には縁がなかったが、昨年は初戦の上田西戦を延長10回タイブレークで制すると、その後も快進撃を続けてベスト4に進出している。それまで4回の甲子園とはいったい何が違っていたのだろうか。

「それまでの4回と違っていたのはまず本当に心から楽しんだことだと思います。今回もまた勝てないんじゃないかというのも多少はありましたけど、それを吹っ切ってくれたのは選手たちですね。
甲子園は良く悪くも選手が変わっちゃうんですね。例えばそれまで130キロちょっとしか出ていなかったピッチャーが甲子園でいきなり140キロ出たというのもありました。2009年の明豊戦はそれで逆に打たれたんですけど(笑)。
でも去年の夏は試合前に色々データ渡してミーティングをやって、こうやっていこうと言ったことが初回からできたんですね。普段と全く変わらなかった。ランナーが出たら走れるぞとは伝えていたんですけどいきなり走って、次に出塁した選手も走って、本当に言った通りできているなと思って自分も楽しませてもらいました」

これまでとは違い、選手が普段通りのプレーをできたことが大きいと話す小菅監督だが、監督自身もこれまでの甲子園とは違っていた部分があったという。
「甲子園のベンチって他の球場ではありえないんですけど、すぐ後ろにお客さんがいるんです。これが自分は嫌で嫌でたまらなかったんです(笑)。何とも居心地が悪くて、サインを出していてもなんかじろじろ見られてばれているんじゃないかなと思っていました。それが去年は全くそんなことを感じなかったんですね。多分自分の気持ちの持ちようだと思うんですけど。改めて後ろ振り返ってみても、お客さんは自分のことなんか見てないんですよ。木内(幸男/前常総学院監督)さんはいつも『甲子園行ったらあの雰囲気でやるしかないんだよ』と言っていたんですけど、5回目でやっとそれが分かった気がしました」



監督自身がそのように感じていたことが選手にも自然と伝わり、それが普段通りのプレーに繋がった部分もあったのではないだろうか。前編では指導者としてのアップデートを意識しているという話だったが、その具体例についてもこう話してくれた。
「一番の変化は『言わなくていいことを言わなくなった』こと。もしくは『言い方を変えた』ということですかね。例えば練習をチンタラやっていたら『チンタラするな!』って言いたくなるじゃないですか? そうじゃなくてまず『何でチンタラしているんだろう?』と考えるようになりました。疲れている? 何かがおかしい? じゃあそれは何なのか? ということですよね。それで様子を見て、大体は次の日とか次の週にはしっかりするんですよ」

そこで監督から何かを言われていたら、選手達の気持ちも落ちるのだと言う。
「自分も休みの日に珍しく家にいて、庭の草刈りをしようかなと思いながらちょっとくつろいでいたら娘から『お父さん、庭の草刈りしてね』と言われて腹が立つんですよ。今やろうと思っていたのにと(笑)。だからこの前もグラウンドのトイレを見ているときれいな日ときれいじゃない日があったんですね。交代制でやっていますから、ある特定のグループはしっかりやっているんですよ。それに気がついたので、きれいだった日に全体のLINEに『今日はトイレがきれいだったね』と送ったら、他の日もきれいになったんですね」

できなかったことではなく、できていたことを言われると、選手達も『またやろう!』という気持ちになる。
「だから私はそうやって選手の色んなところを観察するのがまず仕事だと思います。プレーでも選手の変化に気づいて、良くなった点を『前と比べてこう変わったけど意識してる?』とか声をかけると選手も喜んで色々話してくれます。上手くなる選手ほどそうやって考えながらやって、見てほしいと思っていますね」


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