目標体重を決め、プレゼンテーションを毎月実地
選手たちの身体つきを見れば、強豪校に引けを取らない肉体に仕上がっていることが一目でわかる。今や高校野球でも多くの強豪校で取り入れられているウエイトトレーニングに関しても専門のトレーナーから指導を受けている。
「ウエイトトレーニングは週2~3回行い、その際に補食としてご飯を400g食べるようにしています。目標体重へ向けての取り組みの一環として5人一組のグループを作り、月ごとにグループの達成率を数字に出して経過を報告する日を設けています。『僕らのグループは目標体重をクリアするために、休み時間に補食としておにぎりを必ず2個食べるようにします』と、会社で行われる会議のようにみんなの前でプレゼンテーションするんです」。
そこでは「おにぎりといっても何gのおにぎりを食べる予定ですか?」などチームメイト同士で質問や意見をぶつけ合うのが常だという。達成率が悪いグループは軌道修正し、目標に向かって努力をする。これもサラリーマンを経験した黒坂監督ならではの組織力を上げる取り組みの一つかもしれない。
恩師の教えを受け継ぎ、高みを目指す
「野村監督と出会っていなかったら高校野球の監督は引き受けなかったかもしれない」それほどまでに黒坂監督に影響を与えた野村監督の教え。本来なら門外不出であるノートの使用許可をもらった時に「(高校野球の監督は)俺が一番やりたい仕事なんだ」と口にしていたという。「『野球を頑張る』ではなく、『野球で頑張る』ことを忘れてはいけません。野球だけ一生懸命にやってもダメです。この3年間が大人になった時の礎になるよう、野村監督から教わった知識や技術を選手たちに伝えていきたいと思っています」。
そんな黒坂監督のもとで野球を学ぶべく、現在は県外からの入部希望者も増え、今春には野球部専用の室内練習場が完成する。学校全体で野球部を後押しする体制も整いつつある。
野村監督は「理をもって接する。理をもって戦う」という考えを貫き偉大な功績を残した。「理」とは知識と知恵、考え方だ。強大な力を持つ相手にも、理さえあれば勝機は必ずある。昌平の理が埼玉を制する日はそう遠くないのかもしれない。(取材・写真:細川良介)
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