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【昌平】野村ID野球の申し子が、創部初の甲子園出場を目指す(後編)

2019.4.22

黒坂洋介監督が2017年に再就任した際に、変わったことが2つある。一つは選手たちとコミュニケーションを密に取り、体調や状況によってその日のメニューを柔軟に変えること。もう一つは、サラリーマン時代に習得したパワーポイントやエクセルを駆使してミーティングを行うことだ。


選手の意見をふんだんに取り入れる練習メニュー

取材日の前々日まで関西遠征だったこともあり、前日は完全オフ。だが、連日の練習試合続きで疲労は抜けきらず、選手たち自ら「今日の午後練習は休養に当てさせてください」と申し出てきた。高校野球というと指導者がスケジュールをぎっしり管理するイメージが強いが、黒坂監督は選手たちの素直な意見を聞き入れる。

「指導者にやらされる練習では伸びませんし、シーズンが始まったばかりで無理をする状況でもありません。ある選手に『昨日の休み、何をしていた?』って聞いたら『チームメイトと鎌倉に行ってきました』って言うんですよ。そのあと『本当に男だけか?』って聞いたら『はい……』だって。怪しいなって思い一緒に行った選手に『昨日女の子と鎌倉行ったんだって?』ってかまをかけたら『はい!』って(笑)。まぁ、時にはリフレッシュすることも必要ですからね」。

選手とコミュニケーションを欠かさない黒坂監督ならではのエピソードと言えるだろう。練習中も「今日は試合形式で確認したいことがあるので1ヵ所バッティングをやりたいです」という選手の意見に、黒坂監督は「よし、やろう!」と二つ返事で答える。選手が集まり、意見を交換し合う光景も目立つなど、グラウンドの内外で監督と選手、選手同士のコミュニケーションの良さが目立っていた。



ITを使い、野球に必要な知識を植えつける

「社会人野球時代(シダックス)に野村克也監督から受けたミーティングを参考に独自にアレンジを加えています。選手たちに言葉だけで伝えるのではなく、視覚としても理解しやすいようパワーポイントを使いさまざまなことを教えています。
例えば『ボールカウントの性質』について頭でちゃんと理解している選手と、なんとなく理解している選手では打席での対応力が違います。この『なんとなく理解していること』をミーティングで突き詰めていくのが野村監督流です」。



野村監督の教えを受けた黒坂監督のノートには国語辞典のように「判断力」や「戦略」という言葉の意味がわかりやすく載っている。例えば「感性」についてはこのように記されている。

“感性は生きる力なり。鈍感は命取りになります。感性の源になるのは欲求や欲望、願望の強さだ”。

高校野球の現場でも「感性」という言葉を使うケースがあるかもしれない。だが、言葉の意味をちゃんと説明できる指導者は果たして多いといえるだろうか。

「ミーティングでは戦術についても教えますが、こういった雑学も交えて考える力を伸ばしていきます。常々『考えて失敗したことよりも、何も考えずに成功したことの方が悪だ』と言っています。野球でも何も考えずにたまたま上手くいったプレーより、考えた上でミスをしたほうが絶対に次に繋がりますから」。



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