最速149キロ右腕、2年生エース西純矢を擁して甲子園を沸かせた2018年の夏。あれから4ヶ月が立ち、チームは西はどんな冬を迎えているのだろうか? 12月の半ば、岡山県赤磐市にある創志学園のグラウンドに足を運んだ。
中国大会準決勝の広陵戦。結果的には8回コールドで敗れたが、7回までは1−0の緊迫したゲーム展開だった。
「持っている力そのものは変わらなかったと思うけれど、最後は伝統校との力の差があったのかなと。8回までは悪くはなかったのですが、何より私が掛けた“言葉”がなかったらね......。1−0のまま終盤まできて、“1−0で何とか食らいついていこう”って言ったんですよ。
でも、本当は勝ちにいかないといけないんだから、逆転するぞ、ぐらいのことを言わないといけなかった。西からすれば相手は中学時代のチームメイトが多いから意識したところもあると思うけれど、私の言葉に悔いが残りますね」。と長澤宏行監督は振り返る。
秋の公式戦が終わり、主将を川畑透人から正捕手の横関隼に変えたことも指揮官の大きな意図があった。「良い投手には、やはり良いキャッチャーが必要。西を動かすにはキャッチャーに責任感を持たせた方が良いと思ったんです」。
横関はキャプテン経験がなく、キャプテンとしての器があるという訳でもなかったという。だが、横関が自身の立場を理解し、自分が何とかしようと懸命に動くようになった。率先して声を出し、ナインを鼓舞する姿に「予想以上の働きをしてくれている」と指揮官も目を細める。
西はその高田の躍動を見て創志学園という存在を知り入学してきた。横関も同じく、高田に憧れて自身の判断で創志学園を志望。長澤監督が勧誘した訳ではなく、選手たちの“目”で創志学園を選んできた。長澤監督は選手を縛ることがなく、自身の考えを踏まえながら選手それぞれの個性を伸ばす。
試合ではのびのびとした動きを見せる創志学園ナインの姿が、中学生の心を掴んでいるのかもしれない。それでも「やはり難しいことは多いですね。今回の西のガッツポーズや帽子がすぐに落ちてしまう件に関しては対処法を色々と考えました。夏から帽子を変えたり、西とは色んな話をしたり......。それでも何とか選手を見ながら、ここまでやってきたつもりです」。
今年は西を中心に注目の熱はさらに増すだろう。最速146キロ右腕の草加勝の台頭など楽しみな戦力もおり、チームとしての能力は全国レベルにある。だが、不覚を取った昨秋の一戦は忘れていない。昨夏に続き、再び甲子園に戻るために、歯を食いしばるナインの姿が寒空の下にあった。(取材・写真:沢井史)
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