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【大学準硬式】日本大が優勝! 自粛中も変わらなかった「真の結束力」

2020.8.29

「KANTO JUNKO SUMMER CHALLENGE CUP」最終日は決勝が行われ、日本大学が7-4で早稲田大を下し優勝しました。3位決定戦は5-4で中央大が明治大に勝ちました。今大会は中止となった全国大会の代替大会として関東連盟が特別開催したトーナメント戦。閉会式では優勝杯授与、最優秀選手、ベストナインの発表もあり、4日間の熱戦が幕を閉じました。


「関東準硬サマーチャレンジカップ」レポートFILE(10)

決勝(28日・上柚木)日本大7-4早稲田大

戦評

初回に主導権をつかみ、投打にかみ合った日本大が優勝した。1回表、先頭石田崇人(4年・日大東北)が初球打ちで出塁し盗塁。2四球で2死満塁とし、丸岡麟太郎(2年・宮崎日大)が左前安打で2点を先制した。その後も優位に試合を進め6回、8回にも長打が出て7得点。山﨑―江越の継投で4失点に抑えた。早稲田大はエース清水佑樹(3年・早稲田佐賀)が先発し、外野手の好守などで必勝パターンを狙ったが、8回無死満塁から2点しか奪えず力尽きた。


2回表、2死満塁で2点タイムリーを打った丸山麟太郎(2年・宮崎日大)。初回からアグレッシブに攻めた


6回、左翼越え三塁打で出塁した宮澤大地(3年・日大藤沢)が生還し、盛り上がるベンチ


5回、早稲田大・渡部椋雅(3年・桐光学園)が中堅からの好送球で三走を刺し投手を盛り立てた


エース山崎(写真左)が「自分を支えてくれた恩人。いつも自分の良さを引き出してくれる」と話す捕手の鈴木秀真(4年・宇都宮北)


優勝した日本大学。日大三で全国制覇した元主将・杉山智広コーチなどから日本一のチームづくりを学んでいる


昨夏の全国優勝メンバーが残った早稲田大は、打順関係なく打つ強打線を決勝でも見せた


「協賛をいただき、感染予防を徹底しながらこのような大会ができて本当によかった」。関東地区準硬式野球連盟学連・学生委員長の井上広(4年・慶應義塾)ら大会運営は学生中心に行った


受賞された両チームの表彰選手たち。優秀選手にはオーダーグラブが、ベストナインには木製バットとTシャツが協賛のMAJOR STAGEより贈られた

日本大学優勝コメント


野球発展途上国で学んだ本当の「野球の力」
我慢と苦しさを経てつかんだ優勝

喜びで泣きじゃくる選手たちを見ながら、米崎寛監督の目からも涙があふれた。
「ずっと我慢に耐えてきた選手たちでした。優勝できたことがうれしい」
3月の関東大会では国学院大に敗れ8強に終わった。新型コロナウイルス感染拡大で春のリーグ戦が中止。8月の全国大会も中止に。「悔しい気持ちを抱えて練習してきたのに、それを発揮する場がなく、ずっと我慢を強いられてきた」と振り返る。
 
他校と同じように自粛中は自主練習が中心となった日本大。集まっての練習ができず、チームの意思疎通が難しかったが、窮地を救ったのがキャプテンの石田崇人(4年・日大東北)だった。ZoomやグループLINEを使ってのミーティングを、全体用、ポジション用、学年用と細かく分け、心が離れないように気を配ってきた。大会中は勝利への執念を忘れず準決勝後のミーティングでは、凡打して配慮の欠けた発言をした選手を叱った。
「お前のベンチでのそういう一言が、チームの士気を下げるんだ!」
優勝を勝ち取るため、最後までチームのことだけを考えた。時には嫌われ役になったこともあった。
「仲間を引っ張るキャプテンはいましたが、仲間と一緒に我慢ができるキャプテンはいなかった。コロナ禍の中で、今までのキャプテンにはない強さがあった」と米崎監督は石田を称えた。
エース山崎章雄(4年・日大鶴ケ丘)もチームをひっぱった。準決勝の完封を含む、3試合23回2/3(6失点)。猛暑の中での登板だったが、抜群の制球力でゴロの山を築いた。「ウチは打のチームなので今日も先制してくれて頼もしかった。早稲田は全体で向かってくる手強い相手だった。強かった」と汗をぬぐった。
4年生の集大成になるはずだった全国大会なくなり、チームは落ち込んだ。しかし7月に代替大会となる「サマーチャレンジカップ」の開催が決定。このとき4年生以上に喜んだのが、下級生の選手たちだった。「その気持ちがうれしかった」と山﨑。「4年生にいい思い出を残そう」とチームが一つにまとまった。
 
日本大は2018年から2年連続で「ASEAN国際野球プログラム」に参加している。インドネシア、フィリピンで子供から大人までを対象にした野球教室を行い、国際交流と野球普及を行うという活動だ。道具がなく、恵まれない環境で野球を楽しむ野球少年たちを見て、当たり前のことが当たり前ではないことを選手たちは学んだ。石田や山﨑は活動自粛中にこのときの経験を思い出し、心を強く持ち続けることができたと言う。
80人で目指すチーム作りは「野球でも日本一、人間性でも日本一」。
全国大会はなくなったが、頂点を勝ち取るまでの苦しさ、そして喜びが、選手たちの身体にあふれていた。準硬式でも本気で取り組めば熱くなれる。そのことを全チームが教えてくれた今回の大会だった。

早稲田大・中村康祐(捕手・4年・早稲田佐賀)


「競った試合の中で、我慢しなきゃいけないという状況の中で、自分たちがミスをして相手に突き放されてしまった。来週から始まる秋のリーグ戦では自滅することなく、自分たちの試合をしっかりして、4連覇を果たしたいと思います」



■表彰選手
最優秀選手 日本大・石田崇人(4年・日大東北)
最優秀投手 日本大・山﨑章雄(4年・日大鶴ケ丘)
最優秀打者 早稲田大・関大輝(3年・江戸川学園取手)
 
■ベストナイン
投手  早稲田大・金田歩(4年・早稲田実)
捕手  日本大・宮澤大地(3年・日大藤沢)
一塁手 早稲田大・押尾雄輝(4年・早稲田本庄)
二塁手 早稲田大・塚脇太陽(4年・市川)
三塁手 創価大・坂元良行(3年・創価)
遊撃手 日本大・福村巌輝(3年・磐田南)
外野手 日本大・陰山健(4年・日大三)
外野手 早稲田大・関大輝(3年・江戸川学園取手)
外野手 明治大・永井克樹(2年・広陵)
 
*関東選抜メンバーとして9ブロック大会(11月20~22日・岡山)出場へ推薦

(写真・取材/樫本ゆき 協力/関東地区準硬式野球連盟学連理事)

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