体を動かすときは必ず筋肉は伸び縮みを繰り返して力を発揮するのですが、筋肉を構成する筋線維の一部が傷んだり、部分的に断裂したりすることを一般的には肉離れと呼んでいます。医学的にはケガの程度によって「筋損傷」や「筋断裂」、「筋挫傷(ざしょう)」などと呼ばれますが、いずれにしても筋肉が傷んだことによるものです。
練習終盤の高負荷ランニングは要注意!
肉離れは筋肉のあらゆる部位で起こる可能性がありますが、スポーツの場面でよく見られるものは太ももの後面(ハムストリングス)や前面(大腿四頭筋)、ふくらはぎなど。またスイング動作によるわき腹の肉離れなども見られます。野球では守備や走塁などでの切り返し動作、ベースをまわるときの方向転換によるもの、そして練習終盤に疲労がたまった状態で、高負荷のランニングを行うことでも起こりやすくなります。下肢の肉離れでは「走っているときにブチっと音がした」「急に力が入らなくなった」といったわかりやすいサインが現れ、その後すぐに痛みを伴ってプレーを続けることが困難になります。痛みの他には内出血が見られたり、ひどい場合だと筋線維が断裂して少しくぼんだ状態になることもあります。正常な動きがほぼできなくなるので、すぐに氷などでアイシングを行い、炎症症状を拡げないようにして医療機関を受診するようにしましょう。
肉離れを起こす原因はさまざまですが、考えられるのは筋肉の柔軟性が低下していることや、筋疲労、筋力のアンバランスなどです。ハムストリングスに肉離れがよく起こるのは、大腿四頭筋(前面)の筋力に対して後面の筋力が弱すぎることが原因の一つと言われています。またこれにウォームアップ不足やクールダウン不足が加わると、さらに筋肉の柔軟性や関節の可動域などが悪くなってしまい、運動によって加わる牽引ストレス(筋肉が引き伸ばされること)に耐えられずに肉離れを起こしてしまうと考えられます。
肉離れの前兆サインを見逃すな!
肉離れを経験した選手によると、その前兆として筋肉の張りや違和感、硬さを感じることも多く、いつもと違った体の状態を見逃さずに対応するだけでも肉離れを未然に防ぐことにつながります。おかしいなと思ったらまずはストレッチを行って左右の状態を確認したり、体が温まった段階で違和感が改善するかどうかをチェックしましょう。筋肉を伸ばすだけでも痛みがある場合は、これ以上負荷をかけると肉離れを起こすサインです。ムリをせずに休むようにしましょう。また入念にウォームアップを行うことはもちろんですが、練習の後半になればなるほど疲労も蓄積し、肉離れになるリスクは高まります。高強度のランニングを練習の終盤に行うことはなるべく避けるといった、練習の組み立て方についても工夫する必要があるといえるでしょう。
ポイント!
著者プロフィール
日本体育協会公認アスレティックトレーナー、NSCA-CSCS、 NSCA-CPT。東海大学スポーツ教育センター所属。高校、大学など学生スポーツを中心としたトレーナー活動を行う一方で、スポーツ傷害予防や応急処置、トレーニングやコンディショニングに関する教育啓蒙活動を行う。また一般を対象としたストレッチ講習会、トレーニング指導、小中学生を対象としたスポーツ教室でのウォームアップやクールダウンといったさまざまな年齢層への活動がある。一般雑誌、専門誌、ネットメディアなどでも取材・執筆活動中。大阪府富田林市出身。奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。
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