最近はスマートフォン(スマホ)を利用する機会も増え、小さな画面をのぞき込む姿勢をとることが多くなりました。このような姿勢を続けていると頭が前方に移動し、頭を支えるための首や肩、背中などにより大きな負担がかかりやすくなります。
頭の重さは成人で5㎏ほどあるといわれ、頭の位置が数cm前方に移動するだけでも首や肩、背中にかけて2〜3倍程度の負荷(10〜15kg程度)がかかるといわれています。
このような姿勢は肩こりだけではなく、首の張りや痛み、寝違えや頭痛などを引き起こし、首の骨がもつ自然なわん曲(S字カーブ)が失われて、ストレートネックになってしまうこともあります。さらに背中が丸まったいわゆる「猫背」の状態が楽な姿勢となってしまいます。
もともと投球動作では、ボールを投げるたびに投球側の上腕骨頭が動きにあわせて自然と前方移動し、繰り返し動作によって肩が少し前に入って背中が丸まった状態になりやすいことが知られています。
こうした姿勢の崩れを抑えるために、背筋群のトレーニングや肩周辺部のストレッチなどを行って姿勢をニュートラルな状態に保ちたいのですが、普段の生活習慣から背中が丸まってしまうとスムーズな投球動作を行うことがむずかしくなります。
肩甲骨をしっかり引き寄せることができなければ、腕を窮屈に挙げてしまうために肘や肩への負担が大きくなります。また背中が丸まった姿勢では回旋動作に必要な胸椎を十分にひねることができず、他の部位で代償をさせようとするため、わき腹を痛めてしまったり、腰椎を痛めてしまったりといったことが起こります。姿勢の崩れはパフォーマンスの低下だけではなく、ケガにつながりやすくなります。
猫背を改善するためには主に背筋や肩甲骨を引き寄せるための菱形筋などのトレーニング、そして体の前方部分のストレッチ等を行い、前方に移動した頭を正しい位置に戻すことを心がけましょう。
自分で肩の前方(大胸筋の付け根部分)をほぐすだけことでも姿勢の改善につながります。また腹筋が弱くなっているとやはり体が丸まりやすくなるので、普段の姿勢でも腹筋が姿勢維持に役立つことを意識してみましょう。

姿勢を良くすることはスムーズな投球動作につながる
著者プロフィール
日本体育協会公認アスレティックトレーナー、NSCA-CSCS、 NSCA-CPT。東海大学スポーツ教育センター所属。高校、大学など学生スポーツを中心としたトレーナー活動を行う一方で、スポーツ傷害予防や応急処置、トレーニングやコンディショニングに関する教育啓蒙活動を行う。また一般を対象としたストレッチ講習会、トレーニング指導、小中学生を対象としたスポーツ教室でのウォームアップやクールダウンといったさまざまな年齢層への活動がある。一般雑誌、専門誌、ネットメディアなどでも取材・執筆活動中。大阪府富田林市出身。奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。
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