カラダづくり

気をつけよう!不用意なヘッドスライディング、怪我のもと

2019.8.1

野球は投げる・打つ・守るのほかに、走ることが求められる競技です。特にランナーとして出塁したときにはベース間を効率よくまわり、少しでも早くホームに戻ってくることが得点につながります。またバッターとして打席に入ったときにも、打った後には一塁まで走ることになりますが、まれにヘッドスライディングを試みるシーンを見かけます。審判へのアピールプレーにつながったり、気合や執念といった言葉で賛美されたりすることもありますが、これは大きなケガのリスクを伴うプレーであることを理解しておく必要があります。


塁上をスライディングする目的としては二塁や三塁、ホームベース上でのタッチをかいくぐるためのものですが、打ってから一塁への走り抜ける際はタッチプレーを必要としません。そのため通常はトップスピードで走り抜ける方が早いという意見が多く見られます(これには諸説あり、駆け抜けることとスライディングを試みることとであまり差は見られないという意見もあります)。
スライディングはグランドとの摩擦を生むことによってタイムロスをしやすくなるだけではなく、特にヘッドスライディングの場合は腕を伸ばして滑り込むため、手や指先の脱臼・骨折だけではなく、固定ベースに手をついた衝撃によって肩を脱臼したり、相手野手との接触によって頸部、頭部などへの重篤なケガをするリスクがとても高くなります。

肩の脱臼は手をベースに強くついた際に起こりやすいものですが、この動作はそもそも脱臼をしやすい腕の位置になっていることを理解しておきましょう。腕を横に90度挙げ、その位置で肘を90度曲げて手を上に挙げた状態(肩関節外旋・外転90度)では、肩の後方から衝撃を受けると、上腕の骨が肩関節から外れて容易に前方へと移動(脱臼)してしまう構造になっています。ヘッドスライディングやランナーの帰塁時などはこうした腕の位置になりやすく、相手の選手がグラブでランナーをタッチしたときに脱臼してしまうことが多いようです。

また頭からベースに突っ込むことで頭部や頸部へ大きな衝撃が加わり、さらに野手と交錯することによって重篤なケガにつながる危険性も高く、このようなリスクを考えるとヘッドスライディングは最もケガをしやすいプレーの一つであると言えると思います。アピールプレーも大事ですが、それ以上にケガをしないことが大事です。不用意なヘッドスライディングはなるべく避けるようにしましょう。

著者プロフィール

アスレティックトレーナー/西村典子(にしむらのりこ) 日本体育協会公認アスレティックトレーナー、NSCA-CSCS、 NSCA-CPT。東海大学スポーツ教育センター所属。高校、大学など学生スポーツを中心としたトレーナー活動を行う一方で、スポーツ傷害予防や応急処置、トレーニングやコンディショニングに関する教育啓蒙活動を行う。また一般を対象としたストレッチ講習会、トレーニング指導、小中学生を対象としたスポーツ教室でのウォームアップやクールダウンといったさまざまな年齢層への活動がある。一般雑誌、専門誌、ネットメディアなどでも取材・執筆活動中。大阪府富田林市出身。奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。

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