本格的なオフシーズンに入り、練習量が増えてくるにつれて注意しなければならないケガの一つに疲労骨折があります。
疲労骨折とは体が疲れたことによって起こるものではなく、同じ部位に何度も強い衝撃が加わり続けることによってに小さなひび割れが入り、やがてそこから骨の連続性が断たれて亀裂を生じたものを指します。針金を繰り返し同じところで折り曲げていると、その部分で針金が折れてしまうように、疲労骨折は「金属疲労」という言葉に由来しています。疲労骨折はすねの内側や、足の甲などに起こりやすいですが、野球選手ではスイング動作の繰り返しによって肋骨や腰椎に起こることもあります(腰椎分離症は腰椎の疲労骨折)。
我慢すればプレーできてしまう、厄介な疲労骨折
初期段階でよく見られる症状には運動時痛と圧痛(押すと痛みが出る)があり、場合によっては痛みのある部分が腫れていたり、少しふくらんでいたりすることがあります。そして何よりも疲労骨折の厄介なところは、痛みをある程度我慢すればプレーすることができる点です。はじめのうちは練習の時だけ痛みが生じるようになり、練習が終わると軽くなったり、痛みが感じられなくなったりします。気にならないからといってそのまま練習を続けていると、痛みはどんどん強くなってしまいます。練習が困難になった段階で病院に行くと、実は疲労骨折だったというケースも少なくありません。さらに疲労骨折の初期段階ではレントゲンでもはっきりとした亀裂を確認できないことが多いため、発見することがむずかしいスポーツ障害の1つでもあります。
「投げこみ」「走りこみ」「打ちこみ」など同じ動作を繰り返し、ある特定の部位に大きな外力がかかって痛みが出るような場合は、疲労骨折を考える必要があるでしょう。
特定部位に負担のかかる動作を避けることが予防
疲労骨折になってしまうと骨折した部位を安静にし、競技復帰するまでには軽度であっても1〜2ヶ月程度はかかるといわれています。こうなる前に運動時痛がなかなか改善しないときは早めに専門家に相談したり、医療機関を受診したりして状態をこれ以上悪化させないようにしましょう。疲労骨折を予防するためには、特定の部位のみに負担のかかる動作を避け、ランニング、トレーニング内容に変化をもたせることが大切です。
また体を支えるだけの筋力は十分か、大きな衝撃をうまく逃がすための柔軟性は備わっているかといった体の状態や、環境面(たとえば地面の硬さなど)の要因なども普段からチェックしておくようにしましょう。
著者プロフィール
日本体育協会公認アスレティックトレーナー、NSCA-CSCS、 NSCA-CPT。東海大学スポーツ教育センター所属。高校、大学など学生スポーツを中心としたトレーナー活動を行う一方で、スポーツ傷害予防や応急処置、トレーニングやコンディショニングに関する教育啓蒙活動を行う。また一般を対象としたストレッチ講習会、トレーニング指導、小中学生を対象としたスポーツ教室でのウォームアップやクールダウンといったさまざまな年齢層への活動がある。一般雑誌、専門誌、ネットメディアなどでも取材・執筆活動中。大阪府富田林市出身。奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。
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