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【聖心ウルスラ学園】強固な投手陣を作り上げた名物「チャリトレ」

2018.6.27

ウルスラ名物「チャリトレ」

投手陣を指導する近藤洋次部長日南学園、東海大時代は投手としてプレーした
さて、そんな戸郷を含めたウルスラ投手陣を指導しているのが近藤洋次部長だ。近藤部長は日南学園、東海大と投手としてプレー。現在チームでは投手担当コーチを務めている。

とくに目を引くウルスラ流の投手メニューといえば、やはり200mの急こう配を利用した自転車トレーニング(通称チャリトレ)だろう。グラウンド下の入り口から山上にある曲がりくねった一本道を一気に駆け上がり、途中足を付いた選手は一番下からやり直すという過酷なトレーニングだ。

「横浜高時代の松坂大輔投手(中日)がマウンテンバイクでトレーニングしていたことを思い出したんです。ランメニューとは違ってリラックス効果もあるし、下半身の柔軟性を養う意味でも良いのだそうです。また、眠らせたままの筋肉や関節を刺激し強化できると。戸郷の体重がなかなか増えなかったので、どうすれば増やせるかを考えたら、ウチには坂道がある。筋肉で増やせばいいだろうと。競輪選手みたいにお尻や太ももが大きくなればいいかなと。付けたウエートを落とさないための効果もあります。戸郷は増えませんでしたが、他の投手は軒並みパンプアップしました。当然心肺機能も強化されるので、みんな長距離も速くなったし学校の体力テストではうちの投手陣が軒並み上位に名を連ねるようになりました」(近藤部長)

冬期間はこのチャリトレを5本、さらに自走で5本。とにかくチャリトレはハードで、戸郷も最初のうちは「やってられん!」と音を上げそうになることもしばしばだった。ただ、さすがに「プロ注目」と言われる投手だ。もっとも負担の大きい左急カーブで大外をゆっくりと旋回していく他の投手を横目に見ながら、戸郷だけが勾配のきついインコースを駆け抜けていく。理由は「最短だから。早く終わるので」という単純なものらしい。
「足はパンパンになるのですが、自分のためだと思ってやっています。これが噛み合ってくれば、球速も上がると思って」と、戸郷はこれを成長への糧とした。


また、個人練習がメインとなる火曜か水曜のいずれかに投げ込みを設定している。オフの2月は温暖なコンディションであれば1日200、2日間で400、3日間で500球を投げさせることもある。こうしたハードなトレーニングを課す一方で、大きな故障者を出さないのも聖心ウルスラ学園の特徴だ。これは近藤部長が考案した投球フォームにマッチした“動”のトレーニングと、専門トレーナーが考案する“静”のエクササイズを巧妙にマッチングさせた賜物と言っていいだろう。
「トレーナーさんが考えてくれた静のエクササイズを“メソッドB”と呼んでいます。たとえば肘や手のひらを付いてのブリッジエクササイズ。地面を押すイメージを持ちながら肩関節でしっかりと身体を支えることができるか。他にも肩甲骨の動きを感じながらゆっくりと大きく動かすキャットエクササイズなどのように、ヨガを参考にした動きで全身の可動域を広げているのです」(近藤部長)

聖心ウルスラ学園のぶ厚い投手陣を作りあげたふたつのメソッド。戸郷翔征の存在が何よりその効果を雄弁に物語っているのかもしれない。戸郷はこの“静”と“動”を丹念にこなした結果、2年間で一度も故障を経験していない。また、戸郷はどの部位よりも肩甲骨まわりの柔軟性に秀でているという。登板後に肩の張りを感じることも、ほぼないそうだ。(取材・撮影:加来慶祐)

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