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【高松商業】タブレット端末を使って自分で考える力を養う

2017.10.24

投球フォームをタブレットで撮影する高松商業の野球部員

規律の取れた動きで、黙々と練習に励む高松商業の選手たち。昨春選抜で準優勝を飾った伝統校のグラウンドには、タブレット端末を使い、フォーム撮影をする投手陣の姿があった。多角的な視点を持ち、自分で考える力を伸ばす取り組みに密着した。


iPadは悩める選手の頼みの綱
自分の目で確認し、理解をする

香川県の古豪が昨年の選抜大会で巻き起こした旋風は記憶に新しいだろう。高松商業は20年ぶりとなる甲子園の舞台で秀岳館(熊本)など、並みいる強豪を倒し見事準優勝を果たした。チームを率いるのは監督就任4年目の長尾健司氏。その長尾監督が、積極的に取り入れたデジタルツールがiPadなどのタブレット端末だ。

練習に積極的にタブレットなどを取り入れた指導を行っている高松商業の長尾健司監督
2014年に中学と高校の人事交流で赴任した長尾健司監督

「主に投手のフォーム撮影に使っています。フォームというのは口で説明しても選手には伝わりにくいもの。映像であれば、繰り返し見られますし、選手も私が指導している内容を理解しやすいんですよ」。

撮影に関しては監督だけではなく、選手たち自身で行うことも多い。ブルペンだけではなく、練習試合ではベンチメンバーが投げている選手を撮影するという。

撮った映像は、選手それぞれが保管しつつ、ミーティングなどで改善するポイントをディスカッションし、練習の中で修正する。今までがむしゃらに練習していたことが、一つひとつの動作を意識するようになり、選手の能力と野球に対する向上心は飛躍的に伸びた。

タブレットに保存されている各投手のフォームの映像
各投手のフォーム動画は大切に保存

「映像にしてプレーを客観的に見ることは大事です。3年間野球を続ければ悩むことや、スランプもたくさんあると思う。そこから脱出するきっかけとなるのではないでしょうか。良いときの映像を見るのだって一つの手ですし、立ち止まってそのときのフォームを振り返ることも必要。切実に悩む球児の頼みの綱になってくれれば嬉しいですね」。

頭と身体をフル回転
野球は考えるスポーツ

最新のデジタルツールと伝統校の融合。それはやはり、長尾監督の野球への飽くなき探求心から生まれたものだ。

「最新のアイテムは使わなければもったいないと思います。僕が使えていない機能がまだまだたくさんある。そういった機能を習得すれば、さらに細かい部分を指導できるようになると思うので興味津々です」。

タブレット端末を使うことで選手たちは考える習慣が身についてきた。“考える力”というのは野球をプレーする上で重要なことだと長尾監督は言う。

「野球の試合は約2時間あります。ですが、その中でボールが動いているのは20分ほど。他の時間は投手がボールを持っている状態です。動き自体は止まっているわけですが、投げる・打つ・守る選手たちはボーと立っていてはダメです。その間しっかりと頭で考え、プレーに臨まなければいけません。どんなボールを打つのか、どう守るのか。選手たちには誰かの指示を待つのではなく、自分自身で考える選手になって欲しいんです」。

長尾監督の話を真剣な表情で聞く高松商業野球部員たち

身体と頭をフルに動かし、一人ひとりが考えるプレーヤーになることが高松商業ナインの目標だ。最新機器の革新が、新たな野球を生み出すに違いない。

タブレット端末でチームがこう変わった

POINT1:映像で欠点が明確になった

疲れや、クセによってフォームが崩れてしまわないよう、気になることがあればすぐに撮影し、細かい修正に取り掛かる高商投手陣。映像化することで、自分の欠点をわかりやすく見直せるようになった。

POINT2:フォームへの関心が深まった

撮影したフォーム映像はその場で確認することもできるが、長尾監督が選手個々にLINEを使い、動画を送信している。そのため、グラウンドの外でも自分のフォームをすぐ見ることが可能だ。自宅での自主練習にも役立てることができるのである。

POINT3:チームでイメージを共有できる

撮影をする選手も、自チームの投手の悪癖や修正ポイントを理解することで、理想のフォームをチームのみんなで共有できる。仲の良い投手陣グループでは、動画を見ながらフォームについての相談や、話し合いをすることも非常に多い。

タブレット3台を目的に合わせて使い分ける

高松商業は投手の数が多いため、投球フォームの撮影にiPadを2台使用。撮影した動画は、長尾監督の私用も兼ねるタブレットに送り、選手と共有している。タブレットはデータ通信が可能なためYouTubeでプロ野球選手の動画を見せながら選手たちを指導している。

高松商業野球部で使用されているタブレット

(取材・文=児島由亮 写真=宮脇慎太郎)

香川県立高松商業高校

高松商業野球部員の集合写真

●監督/長尾健司
●部長/三好明彦
●部員数/2年生23人、1年生23人、マネージャー3人
1900年創立の公立校。野球部は春夏合わせ44回の甲子園出場を誇る。選抜は第1回、第32回、選手権は第11回、第13回で優勝を経験。多数のプロ野球選手を輩出する、四国を代表する伝統校。

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