選手の話すことに耳を傾ける、傾聴する
この日の練習もスポーツクラスの2年生は修学旅行で不在だったが、進学クラスの2年生は練習に参加しており、小菅監督の言う多様性が感じられた。またそういったあらゆるタイプの選手の良さを引き出すために特に気をつけているのが「傾聴する姿勢」だという。
「昔は答えを与えて、自分の思うように動かすことが監督の仕事だと思っていました。でもそれだとさっきも言ったようにごく一部の選手しかついてきません。そこからコーチングとかエデュケーションとかの意味を改めて勉強して、選手が持っている答えを引き出してやることなんだなと。そこから選手の話すことに耳を傾ける、傾聴することを気をつけるようになりました。そうすると選手も色々話してくれるようになるんですね。そうやって選手自ら出たものは定着しやすいというのも感じます」
ただ冒頭でも触れたように選手としてだけでなく、監督としても実績を残していたこともあって、それまでのやり方を変えるのは難しくなかったのだろうか。
「それはあまりなかったですね。我々指導者の仕事って逆に成功体験が足を引っ張ることもあります。これまでも5年に1回くらいは見直さないといけないとは思ってやっていたのですが、今は変化も早いですから2年くらいで変わらないといけないと思っています。この前もコーチがノックをしているのを見ていたら、ボールを渡している選手が自分の頭の上を通してコーチに渡したんですね。昔だったら怒っていたと思います。でも、今はこっちが邪魔だったと思って『悪い、悪い』と言って場所を変わりました(笑)。選手ファーストで考えるようになったのは大きいですかね」
そんなふうに考えられるようになったのは、取手二のエースだった石田文樹さん(元大洋/横浜)が亡くなったことが大きかったと振り返る。
「ちょうど自分が土浦日大に来た年に亡くなったんです。甲子園の時は同部屋で、毎試合投げて、部屋では疲れ果ててひっくり返っていたんです。その姿を思い出すと『あー、自分が甲子園で優勝したんじゃなくて、優勝させてもらったんだな』と改めて思うんですよね。監督の木内(幸男)さんもその後に亡くなって、『本当に熱心にやっていただいていたな』と振り返ったりして。そんなこともあって、より選手のために自分がどうすることが良いのかというのを考えるようになりました」(取材:西尾典文/写真:編集部)
後編では昨年の甲子園で勝ち進めた理由などをお届けする。
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