強豪校、名門校を率いる監督たちも、かつては手痛い失敗を経験し、後悔したことがありました。その失敗や後悔はその後の指導にどのように生かされたのでしょうか? 2022年夏に激戦区千葉を勝ち抜いて甲子園に出場し、見事25年ぶりの勝利もあげた市立船橋の海上雄大監督に話を聞きました。(聞き手:西尾典文)
〝もやっ”としたまま迎えた夏の初戦
——これまでの指導者としての失敗談や後悔、そしてそれをどのように生かしているかについて伺わせてください。海上 まだ監督を3年しかやっていなくて(2021年に就任)、それ以前の17年は色んな学校で(野球)部長だったのでまずその時のことが思い出されますね。当然、監督としてその場その場での判断を誤ることもあるのですが、それ以前のことの方が多いような気がします。また試合の結果は監督の責任ですが、部長としてもっとできたことがあったなと思い返すこともいっぱいありますね。
——具体的なエピソードなどはありますか?
海上 僕がここに赴任した2年目(2015年)の夏ですかね。その前の秋は県大会の準決勝で木更津総合に負けて、3位決定戦でも被安打1で負けて、あと一歩で関東大会出場を逃していました。だからチームとしての力はあった世代だったんですね。
そして迎えた夏の初戦の2回戦。監督は次で当たる相手の試合を見るために球場に行くということで、朝の学校での練習は部長の僕が見ることになったんですけど、こちらが見ていても何となく雰囲気に締まりがない。でも力のある選手たちだし、自分たちで何とかするだろうと思ってしまったんですね。
キャプテンには「気を引き締めていけよ」くらいのことは言いましたが、〝もやっ”としたものを感じたまま球場に向かったのを今でも覚えています。
そうしたら一宮商さんを相手に初戦敗退でした。学校としても夏の初戦に負けたのはずいぶん久しぶりで、ネットのニュースなんかにもずいぶん取り上げられました。
——試合内容としてはやはり力を発揮できなかったという感じだったのですか?
海上 風が凄く強い日で、うちの選手が大きい当たりを打ってもことごとく戻されて、長打を狙ってもダメだという話を試合中にしてもなかなか修正できない。普段ならすぐ変えられるだけの選手たちなんですが。
6回に1対1に追いつきましたが、その後こちらのミスで一気に4点取られて、それ以降はより焦ってしまって・・・・・・。9回にはまた大飛球が風で戻されてしまったのですが、今度は相手外野手が落球したんです。でも打った選手は諦めて下を向いて走っていて、落球に気づかずにセカンドでアウト。そんな感じの負け方でした。
——試合前に監督に何か話したりはしなかったですか?
海上 打撃練習を見て、誰の調子が良さそうという話はしましたが、全体の雰囲気みたいなことを言わなかったですね。だから余計に後悔が残りました。試合に向かう前の現場を任されていたわけですから、そこは責任を持って感じたことは選手にも監督にも伝えるべきでした。
そんな苦い経験があったので、自分が感じたことはスタッフにはもちろん伝えますし、スタッフが感じたことも伝えてもらうようにというのは心掛けています。監督が全てを見られるわけではないですからね。