学校・チーム

【聖光学院】斎藤智也監督|屈辱的な大敗から学んだ「パワーアップ」の必要性

2023.12.15

強豪校、名門校を率いる監督たちも、かつては手痛い失敗を経験し、後悔したことがありました。その失敗や後悔はその後の指導にどのように生かされたのでしょうか? 「不動心」を掲げ、この夏にも2年連続18度目の甲子園出場を果たした、東北の強豪・聖光学院(福島)の斎藤智也監督にお話を聞きました。(聞き手:田澤健一郎)


――テーマは「名将の失敗」です。失敗を失敗のままに終わらせず、どのように成果に結びつけたかをうかがいたいです。率直に「失敗」と言われてまず思い出すエピソードは何でしょう?
 
斎藤 失敗というか、教訓になったという意味なら、やはり甲子園初出場の初戦(2001年の夏)。明豊(大分)と対戦し、0対20で大敗した試合。またその話か、と言われそうですけどね。

――それほど斎藤監督にとっては大きなターニングポイントだった。では大敗の理由は?

斎藤 「井の中の蛙、大会を知らず」です。甲子園出場が決まると取材攻勢にあい、自分も初出場ということで舞い上がってしまった。甲子園出場という悲願を達成して、甲子園に向けて練習はしていたけど、いま思えばモチベーションもそれほど高くなかった。「明豊に絶対勝つ」という気持ちにはなっていない。記者の方に「何点勝負ですか?」と尋ねられれば
「勝つなら3対2ですかね」なんて答えていたけど、それだって言わされていたようなもの。

――実際、勝つイメージもあったんですか?

斎藤 相手も初出場だから勝機はあると思っていました。大分大会のビデオを見て抑えられない打線ではないと感じたのも事実。

――しかし、実際は大量20失点。

斎藤 結果は想像をはるかに超えました。「3対2」と言いつつ、心の中では5、6点の失点も覚悟はしていました。だけど2ケタ失点するイメージはなかった。今ならどんな相手でも、そんな展開はあり得ると考えられるようになりましたけど。若気の至り、知らない者の弱みのような話ですよ。



――明豊との差はどこにあったのでしょう?

斎藤 初出場同士だったし、ビデオを見てもウチの選手とそんなに差を感じませんでした。ところが試合で実際に相手を見ると、パッと見の印象はそれほど変わらないのですが、選手がみなたくましい体つきをしている。ウチの選手が1300ccのコンパクトカーだとすると、明豊の選手は3000ccのパワフルな車。エンジンの大きさが違う。明豊だけではなく、甲子園の上位常連校はみんなそうでした。

――その年、明豊は初出場ながらベスト8まで進出していますしね。

斎藤 そう、同じ土俵で戦うこと自体が間違っていた。

――どんな点にエンジンの違いを感じましたか?

斎藤 フットワーク、送球の速さ、スイングの速さ、打球の速さと飛距離……それに圧。やっぱ圧だよね。体もそうだけど甲子園にやってくるのは基本的に足と肩のレベルの高い選手。甲子園のように戦いの場のレベルが上がると選手の体も違うと痛感しました。その後、選手には「甲子園は勝てないことがわかっているチームは来てはいけない場所だ」と選手に言い続けましたね。


PICK UP!

新着情報