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【日大三】三木有造監督の失敗と後悔、2006年西東京大会決勝での後悔

2023.7.27

強豪校、名門校を率いる監督たちも、かつては手痛い失敗を経験し、後悔したことがありました。その失敗や後悔はその後の指導にどのように生かされたのでしょうか?
今年の3月から、2度の甲子園優勝を誇る小倉全由前監督から監督のバトンを受け取った、日大三高の三木有造監督にお話を聞いた後編です。(聞き手:大利実)


2006年西東京大会決勝での後悔

――指導者になってからのお話も聞かせてください。東洋大を卒業した1999年から母校・日大三高のコーチとなり、2011年からは部長、そして2023年4月に監督に就任されました。「忘れられない1敗」はありますか?

三木 2006年、早稲田実との西東京大会決勝戦です。斎藤佑樹投手がいた早実に、延長11回サヨナラで敗れた試合になります。

――勝利した早稲田実が、甲子園で日本一を果たした代になりますね。

三木 監督(小倉全由)から、ポジショニングの指示を任されていたこともあって、1球1球細かく動かしていました。悔いが残っているのは、うちが1点を勝ち越したあとの10回裏の守りです。田中(一徳)が1アウトを取ったあと、代打の右打者。田中の武器はスライダーで、このときもスライダーを主体に2ストライクと追い込んだ状況でした。サインは、外のスライダー。右対右で外にスライダーが決まれば、「引っ張られることはないだろう」という読みで、センターを右中間に寄せました。しかし、スライダーが真ん中に抜けてしまい、打球はセンターやや左へ。定位置であれば捕れていたと思いますが、右に寄せたがためにわずかに届かず、二塁打になりました。



――センターの村橋勇佑選手がダイビングキャッチを試みるも、あと一歩及ばずに打球が抜けていったのを覚えています。

三木 このあと、同点に追いつかれて、その次のイニングでサヨナラ負け。2アウト目をしっかりと取れていれば、負けることはなかったと思います。自分自身の悔いは、「外のボール球でいいからな、腕を振って投げさせろ!」とキャッチャーに指示を出すことができなかったことです。勝利が見えていたことで、急いでしまったというか……、どうして言葉をかけてやることができなかったのかと、悔いが残ります。試合後、監督には「すみませんでした」と言ったんですけど、「いいよ、いいよ」と。余計に申し訳なく思います。

「気合い」と「練習量」でチーム強化



――この春から小倉全由さんのあとを継いで、監督に就任しました。監督になったことで、変わったことはありますか。


三木 わかりやすく変わったのは、ベンチ内での立ち位置です。昨年までは、監督が捕手寄り、自分が外野寄りに立って、配球やポジショニングの指示を出していました。この春からは、自分が捕手寄りに立ち、助監督の白窪(秀史)が外野寄りに立っています。

――グラウンドの見え方も変わるものでしょうか。

三木 景色が違いますよね。外野側にいると、外野のポジショニングがよく見えるのですが、捕手側に立つと、どうしても視野が狭くなりやすい感じがあります。外野手が視界に入りづらいので、あえて、外野を見てから内野に目を移すことを意識しています。

――監督になってから、選手への接し方に変化はありますか。

三木 ケガに対する心配を、ものすごくするようになりました。特にピッチャーですよね。試合で投げたあと、「肩が重たいです」と言ってきたピッチャーがいたのですが、もう心配で心配で。これまで以上に、チーム全体のマネジメントに目が向くようになっています。



――生活面には変わりはないですか。小倉監督時代は、1年のほとんどを野球部の寮で過ごしていたと聞きました。

三木 結婚して、小さい子どもがいることもあって、監督になってからは自宅に帰ることが増えています。それでも、朝5時には寮に来るようにしています。チームの起床は6時45分ですが、その前に自主的に朝練をしている選手もいるので、監督が寝ているわけにはいかないですよね。朝ごはんは、寮で一緒に食べます。学校に行ってから、「おはようございます」と挨拶するのも何か違うと思っていて、自分が選手の立場だったら、それはイヤだなと。同じ時間を過ごしていないと、言葉にも説得力が生まれないと考えています。

――監督が代わったこともあり、これから日大三がどんな野球を見せていくのか、より注目を集めていくと思います。三木さんが考える「三高の野球」とは何でしょうか。

三木 「気合い」ですね。古いと思われるかもしれませんが、何事に対しても、全力でやり切ること。高校生なので、うまくいかないときもたくさんありますが、それでも「ナニクソ!」と向かってくる気持ちを大切にしたい。それが、三高の伝統ですからね。

――12月恒例の合宿は、もちろん継続ですか?

三木 もちろん、やります。これまでよりも練習量を増やして、パワーアップする予定です。合宿に限らずですが、日頃のバッティング練習やノックの量を、もっと増やせるんじゃないかと思っています。量をやることで、選手自身、何が大事なのかがわかってくるはずです。監督(小倉全由)からは、「三木らしくやれよ」と言われているので、自分らしくやっていければと思います。
(写真:編集部)


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