試合で許されないプレーは練習でも許さない
取材後の県大会で準優勝を果たし、四国大会でも準優勝まで駆け上がった新チーム。この秋の段階で、長尾監督が求めるのはどんなことか。
「自立です。技術的な力やチームのカラーは、その年代によって違うので、そこは気にしていません。下級生は、浅野(翔吾)や本田(倫太郎)に頼っていたので、今度は自分たちで引っ張っていく番です。“良い子”はたくさんいるんですけど、“勝てる子”“チームを勝たせる子”になってほしいですね」
長尾監督が練習を見るときに、大事にしている観点があるという。
「単純な話ですが、『試合で許されないプレーを練習で許すな』。試合でダメなのに、練習でオッケーはないわけです。ダメなプレーが出たときに、周りの選手がどれだけ指摘できるか。今はまだ、監督が言っている段階なので、それでは勝てないですね」
なぜ、監督からの指摘では勝てないのか。その理由が、選手の主体性を重視し、『価値ある答えは考えた答え』を掲げる長尾監督らしいものだった。
「監督はフェアゾーンではなく、ベンチにいるので。グラウンドの中にいる人間が言えるようにならないと、瞬間、瞬間の判断が遅れていきます。ベンチからの指示やサインを待っていたら、もう遅い。だから、自分で判断できる選手がいたほうが、絶対に強いと思っています」
判断力も、スキルのひとつだろう。このスキルがなければ、持っている力を試合で出し切ることはできない。
「選手によく言うのは、『勝敗は相対関係だよ。うちが100の力を出したうえで、相手が上回ったのならそれは仕方がない。また練習をすればいい。でも、うちが80の力しか出せなくて負けたら、それは悔いが残るよな』。練習の段階から、試合を想定して、常に100を出せるようにしておく。やることがきっちりとできれば、そう簡単には負けないものです」
準々決勝で、近江(滋賀)に6対7で敗れた今夏の甲子園。バントや守備にミスが続き、自ら主導権を手放す展開だった。
「負けに不思議な負けなし」
長尾監督がよく口にしている言葉だ。普段の練習から、「負け」の要素をどれだけ減らしていけるか。ひとりひとりが自立し、試合の中での判断力を高め、100の力を出せるようになったとき、おのずと勝利は近付いてくる。
(取材・文:大利実/写真:編集部)
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