学校・チーム

【小山台】結束力のルーツは「ボトムアップ」。創部最多の111人で挑む夏

2020.7.22

「甲子園は心の中にある」。上江洲主将の新たな決意

飛びぬけた選手がいなくても上位進出する小山台。今年もつなぐ野球が持ち味だ
過去10年の3大会(秋春夏)でベスト8以上が10回。激戦区・東東京の強豪校になりつつある小山台。コロナ禍で時勢が不安定な中、スポーツ推薦のない公立校に56人もの新入部員が入った。初めて3学年がそろった7月1日のミーティングで、福嶋監督は選手に向かってある“約束”を伝えた。
「いいかい、優先順位は、生活、勉強、その次が野球だぞ。野球中心の生活ではいけない。生活の中に野球があるんだ」と。

主将の上江洲礼記(うえず らいき=3年)は、昨夏準優勝を経験した唯一のレギュラーだ。甲子園出場の夢は消えたが、最多部員をまとめるリーダーとして新たな決意が芽生えたと言う。「僕たちは日頃から『愛されるチーム』を目標に生活しています。じゃあ、どんな人が愛されるのかと言うと、私生活も勉強も野球もしっかりやって、感謝の気持ちを伝えられる人だと思うのです。それを教えてくれたのが福嶋先生でした。甲子園大会がなくなり、東東京大会が無観客試合となり、目標や感謝の気持ちを伝える場がなくなったけど、恩返しの気持ちを心の中にしっかり持ち、一生懸命プレーします。それが福嶋先生の言う『甲子園は心の中にある』という意味だと思うからです」。

大会のキーマンとなる(左から)藤原駿太、中川武蔵、上江洲礼記、伊藤勝真、飯田瑶生(すべて3年)
初戦の相手は東京実だ。福嶋監督は「厳しい戦いになることは確実」と表情を引き締める。秋の都大会で日大二に1回戦敗退してから、少ない好機を生かす打撃を磨き上げてきた。試合当日は、午前中に学校で授業を受けてから神宮球場へ移動することが決まっているが、選手たちの平常心が乱れることはない。「心の甲子園」を目指す夏がいよいよ始まる。

東東京最多の部員111人となった小山台だが、チーム方針「生活の中に野球がある」は変わらない

小山台の選手は、なぜ落ち着いていられるのか。なぜ勉強をおろそかにしないのか。なぜ野球で結果を出せるのか…。過去にわずか4校しかない都立の甲子園出場校の一つ、小山台の強さの秘密と、メンタリティの強さ、家庭生活での工夫などについては9月上旬発売の「想いをつなぐ 2020年夏の球児たち」(辰巳出版)で詳しく紹介する。
選手たちが胸に刻む「心の甲子園」とは、いったい何なのか。その秘話に迫る―。

(取材・文・写真/樫本ゆき)


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