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【唐津工業】「がばい旋風」で球史に名を残した副島監督、代替大会で「1勝」目指す

2020.6.5

甲子園大会中止の夏となったが、代替大会が決まった選手たちは新たな目標に向かって走り出している。佐賀・唐津工もその一つだ。監督を務めるのは、2007年夏の甲子園で全国制覇した元佐賀北の副島浩史さん(31)。「野球ができることに感謝する大会にしたい」。球史に名を残した満塁弾男が、勝利だけではない野球の意義を選手たちに教える。


唐津工・副島監督は「大会があるとないとでは生徒たちのモチベーションが全然違う。決断してくれた関係者に感謝しかないです」と代替大会ができることの喜びを語った。佐賀は県庁、教委、高体連、高野連の4者が話し合い「SAGA2020SSP杯」の開催が決定。決勝は地元の聖地、みどりの森県営球場だ。5月20日の甲子園中止発表のときはショックで目標を見失っていた唐津工の選手たちも、気持ちを立て直して今は練習に打ち込んでいるそうだ。
「大会ができることになって、お前たちは幸せだぞという話をしました。うちは3年生が1人しかいない2年生主体のチームですが、休校期間に経験したことは本当に大きいし、来年にも必ず生きるはず。いま、生徒が心から野球を楽しんでいる姿がかわいくて仕方ないです」。父親のような口ぶりで話した。

初めてテレビで「がばい旋風」を見ました(副島監督)

球史に残る「がばい旋風」は13年も前。3年担任も務める「副島先生」の活躍をリアルタイムで知る生徒はいない。そんな中、5月のNHK特番・スポーツ名勝負で「佐賀北―広陵」が数回にわたってオンエアされた。0-4、8回裏1死満塁。佐賀北・2番井手和馬が1-3から押し出し四球で同点。なお満塁で、3番副島が3球目のスライダーを捉え、レフトにスタンドイン。逆転満塁弾。5-4で全国制覇を果たした。公立高校の優勝はこの大会以後、一度もない。大会チーム打率2割3分1厘は金属バット導入以降の優勝校で最低。大会史上最長の73イニングは、タイブレーク導入で今後破られることはないだろう。

「僕たち、タフでしたね(笑)。初めてあの試合を見て、やっぱりキャッチャーは大事だな~とか、暑い中よく守ってたよなぁ、守備練習だけは鍛えてきたもんなぁ~とかいろいろ思い出しました。僕らメンバーは誰もプロ野球選手になれなかったけど、甲子園を目指して頑張った努力は負けてなかったと思います。そういうチームをまた作りたいなと思いました」。

2007年、全国制覇した佐賀北のメンバー。「思い出を残してあげたい。無心で甲子園を目指したり、仲間とバカ言い合ったりした高校時代が、自分にもありましたからね」(前列右から2人目が副島監督)

再開後の練習試合は、元エース久保監督と真剣勝負!

副島監督は高校卒業後、福岡大学から佐賀銀行に就職。高校野球への思いが経ち切れず、特別支援学校で教育の原点から学んだ。2018年4月に同校着任。11月から指揮を執っている。唐津工は1996年夏以来、甲子園出場を果たせていないが、昨夏は佐賀商を破って8強入り。「地元の子供たちを甲子園へ」という夢に1歩1歩近づいている。

休校中はいろいろな発見があった。テレビで「がばい旋風」を見たこともその一つ。オンラインツールのZoomやSlack を使って自宅からリモート部活も経験した。

休校中はSlackを使ってメニューを部員に配信。副島監督はオンラインでやり取りしながら、動画に手書きでアドバイスを書き入れていた

インターハイ中止を機に他のスポーツのことも真剣に考えた。「野球がしたいな。こんなに天気がいいのにな」。空を眺め無力感を感じた日もあった。去年の今ごろは夏の大会前で生徒にカミナリを落とすこともあったが、今は楽しさしかない。
「部活再開後の練習試合は、久保(貴大=佐賀北優勝投手)が監督する鹿島高校とやったんですよ。1勝1敗でした。球場も借りての真剣勝負。楽しかったなぁ…」。「選手がうらやましく思った」と言う。唐津工は新チーム結成以来、公式戦で1勝もしていない。代替大会が無事にできたら貪欲に「1勝」を目指すつもりだ。

ちなみに…。今回の代替大会を決定した佐賀県高野連、吉冨壽泰理事長は佐賀北の元部長。副島監督、久保監督らとともに夏の甲子園を戦った指導者だ。努力が実を結ぶことを教えてくれた高校野球に恩返しがしたい。生徒たちに思い出を残してあげたい。その一心で準備をする。
(文/樫本ゆき)

SAGA2020SSP杯

佐賀県は、県高校総体と、校野球佐賀県大会を合わせた代替大会「SAGA2020SSP杯 県高校スポーツ大会」を6月13日から7月30日まで行うことを発表した。29競技30種目が参加。高校野球は6月18日抽選会、7月11日開幕。土日祝日を使って準々決勝までを行い、28日に準決勝、30日に決勝を行う。
無観客試合を基本とし、みどりの森県営球場、ブルースタジアムの2会場を使用。感染予防、熱中症対策を最優先に考えながら、ほぼ例年どおりの形で大会を行う。(6月4日現在)37チームからの辞退はなし。
県、県教委、県高体連、県高野連の4者一体が公言されたのは全国でも珍しく、山口祥義知事は「高校生がこれまでの成果を発表する場であり、新しい人生のスタートへの糧にしてほしい」とエールを送っている。

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