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『打撃伝道師 神奈川から甲子園へ――県立相模原で説く「コツ」の教え』を紐解く4つのキーワード

2020.5.11

3.無知の知

 短い練習時間で成果を上げるためには、「うまくなりたい」「成長したい」と選手自身が主体的に取り組む姿勢が必要になる。指導者にやらされているうちは伸びていかない。
 佐相監督が上達のコツとして説いているのが「無知の知」という考え方だ。ギリシャの哲学者・ソクラテスが残した言葉であり、「自分自身の無知を自覚することこそが、人間の賢さである」という意を成す。
「知らないことや、できないことを自覚しておけば、向上心を持って、学び続けることができる。県相の場合、もともと打てるような子は入学してきません。その分、『自分を変えたい』という素直な心や向上心を持っているのです」

4.文武不岐

「文武両道」と評されることが多い県相模原だが、佐相監督の考えは少し違う。掲げるのは「文武不岐」だ。
「文武両道は“文”と“武”をそれぞれ頑張る意味で、文武不岐は“文”と“武”の頑張りがどちらにもつながっていく。別々の道か、あるいはひとつの道なのか。教え子を見ていても、部活を一生懸命に頑張る子は、学力も伸びていきやすい。もちろん、その逆もあります」
 伸びる生徒に共通しているのは、時間の使い方のうまさだという。電車の中や授業の休み時間に単語帳を覚えるなど、すきま時間を有効活用する。グラウンドでは、チーム全体で「3歩以上はダッシュ」など、時間を無駄にしないためのルールをもうける。
「時間がないのなら、作り出す。『時間がない』と嘆いているうちは、成果は生まれません」
 与えられた環境をいかにプラスに転じて、力に換えていくか。私学と対等に戦うための武器は、自分たちの手で作り出していく。(文・大利実/写真・山下令)

後編に続きます。




佐相眞澄 著(県立相模原高校野球部)
< 仕様 >四六判240ページ
定価1,600円+税 2020年2月25日発売


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