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【県立相模原】経験に裏付けされた佐相監督の打撃理論と引き出しの多さ

2017.8.3

『神奈川で打ち勝つ! 超攻撃的バッティング論(竹書房)』を発売した神奈川県立相模原高校の佐相真澄監督

神奈川県内有数の指導者であり、『神奈川で打ち勝つ! 超攻撃的バッティング論(竹書房)』を今月発売した神奈川県立相模原高校の佐相真澄監督。出版にいたった経緯、ご自身の経験などを紹介した前編に続き、後編ではバッティング技術アップのために普段からできることなどをうかがった。


佐相監督の打撃理論と引き出しの多さ

アップの中からバッティングに繋がる動きを取り入れる

近年は激戦区神奈川でも安定した実績を残している相模原高校だが、毎年多くの生徒が国公立大学や有名私立大学に進学しており、入学するための難易度は高い。そのため野球部に入部してくる選手も中学時代にシニアやボーイズで実績を残している選手は少なく、中学の軟式野球部出身の選手が多い。そのような選手は前編でも触れたように、きちんとしたバッティングフォームを身につけておらず、バットを振る力も不足しているためまずはしっかりと振れるようにするところからスタートするという。

「ほとんどの選手がしっかりした形で打てるようになるためにまず1年くらいはかかりますね。でもきちんと練習すればある程度は打てるようになりますよ。スイングの軌道を覚えること、あとは下半身の使い方ですね。よくやるのは重いもの、ポリタンクに水を入れたものでもいいんですが、それを抱えて股関節と膝の使い方を繰り返します。

これをアップの時にやるんですよ。そうすると下半身の動きができてくる。アップもただやるのではなく、なるべく野球の動きに繋げるようにしています。あと投げる動きと打つ動きは通じるところがありますよ。あまり打てなかった選手にピッチャーをやらせて、ピッチングの動きを繰り返していると、しばらくするとバッティングが良くなるということもありました」

あらゆるボールに対応できるステップ、下半身の使い方

最近は高校野球でも多くの球種を操る投手が増えており、手元で小さく変化したり落ちるボールも珍しくなくなっている。正しい軌道で強くバットを振ることができても、それらのボールや緩急に対応することができなければ当然打ち勝つことはできない。そのための対応で重要になってくるのは、踏み出す足のステップだという。

「まず踏み出す時に後ろの軸足の股関節にしっかりと力をためておかないといけません。それでそのまま踏み出すのではなく、少し(小文字の筆記体の)エルの字を書くようにして前の足を出します。ステップした時に突くのはつま先だけで、前足の膝は開かずに残しておく。そこからかかとをおろして振ることですね。あと落ちるボールに対してはグリップがしっかり残っていないといけません。ステップした時にグリップも前に出てしまうとそのまま回ってしまいます」

ボールの軌道は常に意識する

せっかく佐相監督に時間をとっていただけるということで、筆者自身の経験から来るバッティングについての疑問もぶつけてみた。筆者が大学の野球部でプレーしていた頃、いつになくバッティングの調子が良かったのだが、約1週間のスキー実習から帰ってくると感覚が大きくずれてしまったことがあったのだ。実習中もバットを振ることはしていたにもかかわらず、良かった時の感覚はきれいに失われてしまっていた。自分にとっては大きな後悔なのだが、このような経験について聞いてみた。

「それは目ですね。スイングの形がいきなり崩れるようなことはないです。しばらくボールを見ていないと、目の感覚が狂うんですよ。それでタイミングのとり方も崩れてバッティングも崩れる。だからなるべく前から来るボールは毎日見た方がいい。目の感覚を狂わせないためには硬式が打てなくてもバッティングセンターに行くのは有効ですね」

バッティングを狂わせないという意味だけでなく、相手投手を攻略するためにも常に想定した練習を行っているという。
「前にも話した移動式のマウンドはそうですし、左投手が相手なら当然それに合わせて練習します。ボールの軌道をイメージできなければ打てませんから。書籍でも触れているサイドスローに対して少し体の向きを変えて構えるというのも、ボールの軌道がオーバースローの投手とは違うからです」

長年の経験に裏付けされた理論と引き出しの多さを感じさせるお話しだった。そしてそれを惜しげもなく公開するところに、佐相監督の野球に対する情熱が感じられた。今年の夏は惜しくも3回戦で敗れ神奈川を制することはできなかったが、秋以降も佐相監督の理論で鍛えられた相模原ナインの打ち勝つ野球に期待したい。


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