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【県立相模原】佐相監督「少年野球の時からしっかりしたバッティングを教えてもらいたい」

2017.8.2

『神奈川で打ち勝つ! 超攻撃的バッティング論(竹書房)』を上梓した神奈川県立相模原高校を指導する佐相眞澄監督

2012年から神奈川県立相模原高校を指導する佐相眞澄監督。中学野球で数々の実績を残した後に高校野球の指導者に転身し、川崎北、相模原でも度々上位に進出しており、神奈川県内でも屈指の指導者として知られている。佐相監督の指導を受けたいといって遠方から入部してくる選手も多いそうだ。

そんな佐相監督が掲げているのが「打ち勝つ野球」。以前の練習レポートでもその一部を紹介したが、そんな“佐相メソッド”がまとめられた『神奈川で打ち勝つ! 超攻撃的バッティング論(竹書房)』が発売となったという話を聞き、更に踏み込んだバッティング理論について話をうかがった。


子どもにバッティングの楽しさを教えてもらいたい

色々な高校の戦い方をテーマにした本は少なくないが、現役の監督が自らの理論や指導法を惜しげもなく出すことは非常に珍しいことである。それでも形にして残そうと考えるようにいたったのは、現在の子どもの野球離れを感じたためだという。

「少子化ということもありますが、それ以上に子どもが野球から離れていっています。色んな要因はありますが、その一つが思い切り打たせてもらっていないことがあると思っています

特に軟式の少年野球で多いんですが、勝つためにとにかく叩きつけろとか、(打球を)転がせとか、バントをしろとかいうことが多くて、遠くへ飛ばしたりすることを教えてもらえない。それだと楽しくないですし、後々高校でやろうとした時に苦労するんですよね

もっと小さい子ども達はボールが硬くて怖いという意識を持ってしまっていることも多いです。そうならないために、小さいうちは当たっても痛くないボールやカラーバットで思い切り打つことから始めた方が良いと思います。そんな現状もあるので、指導者の方には少年野球の時からしっかりしたバッティングを教えてもらいたい。あとはなかなか上手く打てなくて悩んでいる選手に対しても、課題別に対処法を示すことで、ふとした時に見てもらえるかなと思ってまとめました」

先述したように佐相監督は長く中学の軟式野球を指導しているが、当時から決してその場しのぎの叩きつけるようなバッティングを教えることはせず、きちんとした形で「打ち勝つ野球」をしていたという。それがそのまま高校の指導にも繋がっている。

また、佐相監督自身は中学時代に右打ちから左打ちに転向し、そこでバッティングの面白さに気付いたそうだ。

「中学二年生の時に左で打ってみろって言われて打ったらいきなり遠くまで飛んだんですよ。最初はもちろんカーブとかは打てませんでしたけど、それで快感を覚えましたね。利き目が左打ちに合っていたのと、右手の力が強かったのでそれで上手く打てたというのはあると思います」

失敗から学び次に繋げる

そんな佐相監督ももちろん上手くいかなかったことがないわけではない。書籍の中でも紹介されているが、ある学年で遠くへ飛ばす力をつけようと思い、冬場にロングティーをかなりの数取り組んだがそのことで逆にスイングの形が崩れてしまったのだという。

「当時は斜め前からトスするボールだけでずっと打っていたんですね。そのボールを遠くへ飛ばそうとすると体が開いて打つようになるんですよ。斜めティーの限界だなと思いました。それからやっぱり前から来るボールを打つのは大事だなと思って特注のネット前回レポート参照)を作って、前からトスするようにしました。形が崩れていないかチェックするための鏡もそういう経験から来ています」

自分たちでスイングをチェックするために置かれていた大きな鏡

ボールの軌道を常にイメージし、それに合わせて正しい形でスイングするのが重要だということである。しかし、選手はそれぞれ身体も筋力も当然同じではない。全員が同じスイングをするのではなく、それぞれの特性にあった指導をしているという。

「基本的に重要なポイントは同じですが、それでも選手によってある程度の形は違いがあって当然だと思います。だからオリジナルの部分は残しますね。

全員が全員同じスイングで打っているとハマった時は全員打つけど、ハマらない時は全員打てないということにもなるんですよ。そういう意味でも個人によってバリエーションがある方が良いと思います」

実際に今年のチームでも少しグリップの位置が低い選手がいたが、それを無理やり矯正するのではなく、振り出しやすいままにしているという。そしてその選手には他の選手よりも高めに手を出さずに低めに絞って打つように指導していた。このような柔軟性を持った指導をすることも、高い技術を身につけて入部してくる選手が少ない公立高校では間違いなく有効であろう。

後編は更に打撃力アップのポイントなどを紹介します。(取材・撮影:西尾典文)


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