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【県立相模原】佐相眞澄監督の打撃理論と打撃練習(前篇)

2017.5.18
神奈川県立相模原高校野球部を率いる佐相眞澄監督
神奈川県立相模原高校野球部を率いる佐相眞澄監督

2012年に佐相眞澄監督が就任して以来、激戦区神奈川の中でも安定した成績を残し続けている神奈川県立相模原高校。佐相監督が目指しているのが打ち勝つ野球。春の県大会も1回戦で13得点、敗れた桐光学園との2回戦でも5点を奪いその攻撃力は健在だ。そんな県立相模原のバッティング練習を取材した。

神奈川県立相模原高校。毎年数多くの生徒が国公立大学、有名私立大学に進学しており、地元では『県相(けんそう)』の愛称で呼ばれる名門校だ。そんな県立進学校の野球部に注目が集まり始めたのが2012年。県内の公立中学の野球部で実績を残し、2005年から赴任した川崎北高校を強豪に育て上げた佐相眞澄監督が就任したことがその要因である。2015年春に神奈川県大会で準優勝を果たして関東大会に出場し、1951年の希望ヶ丘以来となる神奈川県立高校の甲子園出場に最も近い存在と言われるまでになっているのだ。

佐相監督は中学の指導者時代にバッティング指導のDVDを出版しており、打撃技術の指導については超一流の指導者として知られている。その手腕は横浜高校の小倉清一郎元部長が「神奈川県内5本の指に入る名指導者」と賞賛するほどだ。そんな佐相監督にまず県立高校ならではと言えるチーム事情と、それに合わせた指導法について話をうかがった。

身振り手振りを交えて選手にマンツーマンでバッティング指導を行う佐相眞澄監督
身振り手振りを交えて選手にマンツーマンでバッティング指導を行う佐相眞澄監督

「うちのような県立高校の野球部に入ってくる選手はまず力がありません。入部してすぐ硬式のボールを強く打てる選手はその年に一人か二人いるくらいですね。簡単に言うとまず打ち方を知らない選手達ばかりです。特に軟式出身の子に多いですが、バットが下から出る選手が多い。レベルスイングができないんですよ。まずそれを矯正してやることをよくやります」

バットの軌道を矯正するために行っている練習がネットを使った素振りだ。胸の高さくらいにあるネットに対してバットを沿って素振りを行うことで、正しい軌道を感覚として身につけることができるという。

「バットのヘッドを立たせる感覚をネットを使ってスイングすることで覚えることができます。この時に重要なのは肘の向き。両方の肘が下を向いていないとヘッドを立たせることはできませんから」

そしてスイングの軌道を矯正することともに重要視しているのが構えからトップの形の作り方だという。
「構えについてはある程度バリエーションがあってもいいと思いますが、トップの時のバットの位置と角度は必ず意識させるようにします。体の正面から見ても投手方向から見ても、トップの時のバットの角度は地面に対して45度にする。多少幅はあっても45度から60度の間までですね。そうすることで高めに対しても低めに対してもスムーズにバットが出てくる。自分だけでは分かりませんから、選手同士お互いに見せ合って確認するようにしています。最近ではスマホを使って動画を撮って見せることもよくやりますね。一年生の間は特にそうやって正しいトップの形、スイングの軌道を覚えることを徹底してやるようにしています」

バットの角度について細かく指導する佐相眞澄監督
バットの角度について細かく指導する佐相眞澄監督

相模原の野球部員は現在三学年合わせて選手だけで86人(女子マネージャーが6人)。限られた練習時間の中で全員を佐相監督だけで見ることは不可能なため、選手同士でチェックすることは必要不可欠と言えるだろう。また自分でチェックできるようにグラウンドには複数鏡が用意されていた。

自分たちでスイングをチェックするために置かれた鏡
自分たちでスイングをチェックするためにグラウンドには複数の大きな鏡が置かれていた

正しいトップの形、スイングの軌道を身につけた後はいかに強い打球を放つかということがポイントになってくる。そのために佐相監督がチェックしているポイントが引き手側の肘(右打者なら左肘)の張りだという。
「実際にボールを打っている時にこちらがよく見ているのが肘の張りです。ボールに当てようとすると張りが小さくなって強く打てません。逆に引き過ぎるとバットが出てくるのが遅れてしまいます。これは個人によってちょうどいいというポイントが違ってくるのが難しいところです。少し張りが足りないかなと思っても打てる子もいるのでそういう子は直しません。素振りでは分からない部分なので、実際に打っているのをこちらが見ながらその子に合わせて指摘してあげる必要がありますね」

強い打球を打つ力をつける、ヘッドスピードをアップさせる練習として特に冬の間は重いバット、普通の重さのバット、軽いバットの三種類を使い分けているという。重いものは木製バットにリングをつけて1.2kgの重量があり、しっかり振る力がないと正しい軌道で振ることはできない。また軽いバットでは速くヘッドを走らせる感覚が身につくという。この日も素振りとティーバッティングで三種類のバットを使い分けており、入部して間もない一年生は重いバットに苦戦している選手も少なくなかった。

後編は更に実践的なタイミングの合わせ方、バッティング練習についてご紹介します。

(取材・撮影:西尾典文)

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