接戦で見えた課題、心を鍛え夏に挑む
個人ではなく集団で戦うことに長けてはいるが、一発勝負の怖さがあるのが高校野球だ。時には心技体の「心」が勝敗を左右することがあると川井監督は話す。この言葉には先のセンバツでの反省も込められている。「2点をリードした9回の守りで、先頭打者に対し2ボール2ストライクからバッテリーはアウトローのストレートを選択しました。それまで左打者のアウトローにストレートなんて一球も投げていないのに。その時『あれ、何かおかしい』と感じました。三振を取りにいくというよりも『四球は出したくない……。困ったらアウトローだ』という意図があったのでしょう。ただ、それは打ち損じて欲しいという他力本願の気持ちが出てしまったことと同じなんです。
私を含め、チーム全体が追加点を取った時に勝ちというものが見えてきたのは事実です。その瞬間に、今まで自分たちの意志で打ち取っていた配球が変わってしまったんです。同点にされた場面も追い込んでからのアウトコースのストレートを打たれてしまいました。8回までの配球があまりにも良かったので、口を出そうか私自身葛藤もありました。ただ、最後の最後に心の弱さが出てしまいましたね」
勝ち切るためには心の強さが必要と感じた石岡一ナイン。チームに足りないものを追い求めるため、現在は肉体的にも精神的にもキツイ練習で「心の粘り」を育んでいる。川井監督も選手たちの心の部分をつぶさに観察し、遠からず近からず絶妙な距離感でコミュニケーションを取り、夏の大会を見据えている。
「選手に主体性を持たせているのがうちのスタンスであり、それを変えるつもりはありません。ただ相手はあくまで高校生です。時には上からキツイことを言われたり、指導者が強引に引っ張って課題をあぶり出すことも必要でしょう。夏までの短い期間、一日一日どれだけ妥協をせず、乗り越えていけるかが今の課題です」。
甲子園で培った経験と、浮かび上がった課題と向き合う石岡一ナイン。夏は茨城を制し、甲子園で初勝利を――。
川井監督が情熱を持って育てた選手たちがどのような戦いをするのか。実りの時期は迫っている。
後編では石岡一ナインの練習や、日々の取り組みについてレポートします。
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