伝統校の重みとプレッシャー
今年のチームに関しては髙野監督は「力がない」と謙遜するが、昨秋の大会では強豪私学の一角、春日部共栄を破るなど、県ベスト4に進出。今春もベスト16まで進み、夏のシード権を獲得した。今夏は100回記念大会ということもあり、埼玉県は南北に分かれ、2チームが甲子園に出場することができる。チャンスの年といっても過言ではないはずだ。
「昨夏は最後の仕上げ期間にうまく調整がいかず初戦敗退。高校野球の深いところ、難しさを痛感しましたね。今年だってどうなるかわかりません。少しでも受け身になった瞬間にやられてしまうでしょう。『ある程度やってくれるだろう』と毎年周囲から見られてしまうのは伝統校の重みなのかなと感じます」。
地元の人間だけではなく、偉大なOBを含め、各方面から期待されることは幸せな反面、返って巨大なプレッシャーとなり選手にはのしかかってくる。そのためにも野球の能力だけではなく、強い精神力が必要となるのだ。
「上尾の選手でなければわからない伝統の重みやプレッシャーがある。でも、それを力に変えるくらいの精神力を持たなければいけません。気持ちの部分で相手に絶対に負けてはいけない。そういった気持ちは普段の苦しい練習や、模範となる私生活の積み重ねだと思います。伝統ある上尾の一員としての誇りを持ち、特に3年生は残りの月日を精一杯過ごし、高校野球をやり切って欲しいですね」。
多くの名プレーヤーや、名指導者を生んだ上尾のグラウンド。伝統である「人間性を高める野球」に惹かれ入部してきた選手たちが夏にどのような戦いを見せてくれるのだろうか。汗を流し、声をからす彼らのやり切る姿を見届けたいと思う。(取材・撮影:児島由亮)
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