最近、高校野球界では酷暑による様々な対策がなされるようになった。大会日程にさらに幅を持たせること、試合開始時間の調整、1試合中の給水タイム…。そして投手の球数制限だ。チームの対策としては、いかに計算できる投手を数人育てられるか。その中で、多田監督は近年の履正社の傾向をこう明かす。
「投手がひとりではなく、どちらでもいける(試合を作れる)ピッチャーがいる年は夏に勝っているように思います。97年(夏の甲子園初出場)の夏は小川仁が1人で投げて勝ったこともありましたけれど、最近だと16年の寺島成輝(元ヤクルト)、山口裕次郎の夏や、全国優勝した19年は、清水(大成・早大)、岩崎(峻典・東洋大)もいました。今年の夏も、増田壮、福田幸之介といったピッチャーがいました」。
ただ、16年と19年は府大会で大阪桐蔭との対戦はなかった。それ以外の年はほぼ大阪桐蔭が夏の大阪を制して甲子園に出場している。18年の府大会で激戦を演じた夏に甲子園も制覇し、春夏連覇を達成した大阪桐蔭の戦いぶりは記憶に新しい。
「桐蔭さんが夏に強いのは、複数でしっかりとしたピッチャーを揃えられているから。実際、複数のピッチャーを作るのはとても難しいことです」と多田監督は言う。
今年の履正社のマウンドを分け合った増田と福田は1年からマウンドに立ってきたが、センバツで初戦敗退後、投手陣も含めてチームがなかなか波に乗り切れない時期があった。そのため6月から練習試合を連戦で組み、増田や福田をあえて続けて先発させ、投げる体力や感覚を養ってきた。
(取材:沢井史/写真:編集部)
*後編に続きます
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