学校・チーム

【明豊】川崎絢平監督|情に流されて勝てるほど甘くなかった甲子園

2023.11.6

強豪校、名門校を率いる監督たちも、かつては手痛い失敗を経験し、後悔したことがありました。その失敗や後悔はその後の指導にどのように生かされたのでしょうか? 2021年のセンバツ大会準優勝校、九州の強豪校・明豊高校の川崎絢平監督にお話を聞きました。(聞き手:加来慶祐)


“迷ったら代える”

(インタビュー前編はこちら→

――2017年夏の甲子園3回戦は、今でも語り草になっています。延長12回裏に3点差をひっくり返し、9-8で神村学園に逆転サヨナラ勝ちした試合ですが、当時は継投の失敗を悔いていましたね。

あの試合で先発したのは佐藤楓馬という背番号10の右ピッチャーで、8回を終えた時点でウチが5-2でリードしていました。8回の守りでは「このイニングで最後だから、力を振り絞って頑張れ」と佐藤に伝令を飛ばし、彼はきっちり3点のリードを守ったまま8回を投げ切ってくれました。
ところが、ベンチに戻ってきた佐藤に「さっき伝令で伝えた通り、楓馬はここで交代ね」と言ったところ、一瞬だけ“!?”みたいな顔をしました。普段の佐藤は真面目で大人しくて勉強もできる、人間的にも素晴らしい男でした。いつもなら、ただ「はい!」と言うだけの子が「まだ投げたいです」と自己主張をしてきたのです。
私自身“先発完投もほとんど経験したことがない楓馬が、神村を相手にここまで投げられるんだ”と感動しながら見ていたし、甲子園の大事な試合で初めて自分から「投げたいです」と言ってきたのですから、心が打たれないわけがありません。そして「分かった!じゃあ行け」と言って9回のマウンドに送り出した結果、9回に3点差を追いつかれてしまいました。



――佐藤投手は結局9回途中でマウンドを降りることになりましたが、あの継投判断のミスによって学んだことは何だったのでしょう?

何より、声の掛け方です。「投げたいのか?」と聞かれれば、ピッチャーは「投げたいです」と言うに決まっています。だから、私の聞き方が拙かったんです。ああいう状況では、キャッチャーに聞くべきだったかもしれません。その問いかけに後悔しました。それに“ここは代えるべきだ”と感じたら、後ろのピッチャーを信頼してスパッと代えないといけないと思いました。
もちろん監督と選手、指導者と生徒との間の“情”は大事ですが、情に流されて勝てるほど甲子園は甘くないとも感じました。

――そういった経験があってか、神村学園戦の後は思い切った継投が目立ち始めた印象があります。

早めの継投というか、もう迷ったら代えようと思うようになりました。実際に早いタイミングでピッチャーを代えて後悔したというイメージは、あまりないんです。逆に“遅れたな”と思って後悔したことは何度もあります。神村戦は迷って代えなかったことが失敗だったので。だから、あの試合以降は“迷ったらすぐに代える”という継投になりました。


PICK UP!

新着情報