「楽しい」と「緩い」は同じではない

佐藤監督の話すように東北高校の練習は最初から最後まで楽しい雰囲気が漂っており、東北大会で実際に試合を見た時にもそれが伝わってきた。しかし楽しいことと緩いことは同義ではなく、逆に厳しい部分もあるという。
「本来、好きで始めた野球で、上手になることは楽しいわけですから、楽しく野球をやるのは何もおかしなことではないはずです。でもそれは緩いのとは違います。
昔、初めてアメリカの少年野球の指導の現場に行った時に、芝生に寝転んでいる子がいたんですね。でも練習が始まってもコーチは何も言わない。だから『あの子はあのままでいいのか?』と聞いたら、『上手になるのもならないのも彼の自己責任だ』と言うんですね。自分で上手くなりたければ自分から動くのだと。それを聞いて衝撃を受けましたよね。自分たちで考えてやるというのはそういう側面も当然あります。
自分で上手くなりたいと思って楽しんでやる方が誰かにやらされてやるよりも効果はあるはずですし、高校野球でもそれは同じだと思っています」

東北高校に取材する1週間前、別の取材で仙台育英の須江監督に話を聞く機会があったが、東北高校の印象について聞くと、「夏までよりも選手の能力が引き出されている印象を受けた」と話していたが、まさに佐藤監督の目指す野球が浸透してきている証拠と言えるのではないだろうか。
前述の南三陸に行った話しに戻るが、その後に選手達と海水浴に行ったという。
「そうしたらみんな本当に楽しそうで、この顔で野球をやったらもっといいのにと思うんですよね。そういうことを言うと高校野球らしくないって言われますけど、そんなことは決してないと思います」
東北高校が選抜でも結果を残せば日本の高校野球界が大きく変わるかもしれない。そんな可能性も十分に感じられる東北高校の取り組みだった。(取材・文:西尾典文/写真:編集部)
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