「あと1つ勝てば県大会決定」となる重要な試合を落とした東北高校内には、暗く重い空気がのし掛かっていました。それを振り払うために我妻監督はメンバー表をいったん白紙にすることを決断。
エースを深町耕佑(3年)から渡辺法聖(3年)にスイッチ。ショートにイキのいい1年生選手・杉澤龍を投入し、再スタートを計りました。そこから負の流れが好転し、完封勝利で2連勝。「第5代表」としての切符をつかみました。
今回の大会、背番号を獲得する選手が入れ替わったのは、背番号に関係なく、どの選手が試合に出ても活躍できる。部員101人が底力のあるチームだったいう証拠でした。
「メンバー入りを諦めず、選手たちがコツコツと努力してきたことの表れでもあります」。Bチームを親身に鍛え続けた鈴木雄太コーチ(25)の熱意も実りました。
県大会は登録20人中、19人が出場。まさに「総力戦」。投手の継投、代打や代走、守備固め。今春から導入されたタイブレーク制*についても準備万端。
「いつそうなってもいいように、9回になったら起用する選手を毎試合、頭に浮かべていました」
試合中、目まぐるしく動いた選手交代。その中でベンチにも「次は俺の出番だ」という空気が生まれていました。
「試合が劣勢になると『ヤバい』『誰か何とかしてよ』という空気が広がり、それが嫌でした。まだまだ甘いですが、今大会を通して『一丸になる』ことの意味をわかり、成長してくれたらいいですね」
背番号のある20人全員が、いや、背番号のない選手も一つの束になって戦った春。
“チャンスはいつ転がって来るかわからない”
“背番号のない自分にも、いつか出番は回ってくる”
東北高校の戦いを通して、そんなことを感じました。
夏の大会に向け練習に励んでいる全国各地のチームにも通じるヒントかもしれません。
*タイブレーク制とは
・県大会では、12回終了時に同点の場合13回からタイブレークを開始。東北大会では、9回終了時に同点の場合10回からタイブレークを行う。
・無死、走者1 、2塁の状態からプレーを行う。
・チームは、タイブレーク初回の攻撃を開始するにあたり打順を選択できる(次回以降は前イニング終了後からの継続打順)。