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【東北】準決勝進出!強さを支える投手陣の体幹トレーニング!

2017.7.30
佐々木トレーナーの体幹トレで成長した投手陣の古川原将真、葛岡仁、中山翔太、後藤汰一
佐々木トレーナーの体幹トレで成長した投手陣の(左から)古川原将真、葛岡仁、中山翔太、後藤汰一

防御率0.56。安定した投手陣でまず4強入り

準決勝に進出した東北。ここまで勝ち上がってきた要因は、大会を通じて投手力が安定していたことだ。準々決勝までの4試合、32回2失点、32奪三振、四死球3の好数字。ベスト4(仙台育英、東陵、仙台三)の中で唯一の、防御率0点台を誇る。

チームを支えているのは、3人の2年生投手だ。葛岡仁(左腕・背番号1)、古川原将真(左腕、背番号18)、中山翔太(右腕、背番号10)が切磋琢磨してチームを向上させている。3試合に先発している古川原は昨夏の甲子園経験者。終盤勝負に強い東北は、古川原から葛岡、または中山へとつなぐ継投策で勝ち上がってきた。

そんな東北に「影の功績者」がいる。OBで野球部専属トレーナーの佐々木隆志さん(52)だ。佐々木トレーナーは元西武ライオンズトレーナー・宮本英治氏に師事したのち、2014年10月から母校で野球部のコンディショニングを担当。外部スタッフとして週1回、チームを指導している。

2014年10月から東北高校硬式野球部のトレーナーとして活動している佐々木隆志トレーナー
2014年10月から東北高校硬式野球部のトレーナーとして活動している佐々木隆志トレーナー

昨夏7年ぶりに甲子園出場を果たした東北だったが、その要因の一つに、佐々木トレーナーの体幹トレーニングによる「肉体改造」があった。「強く、しなやかで、ケガをしない」身体作りを長期計画で指導。選手たちを夢の甲子園まで導いた。

全国で戦える身体作り

佐々木トレーナーに話を聞いた。まず最初に口にしたのは「このような環境を作っていただいた学校、我妻監督に感謝したいということです」という言葉だった。創部113年、伝統校の東北。体を強化するトレーナーをチームで採用したのは初めて。佐々木トレーナーはその重みと、責任を感じている。

体幹トレ導入のいきさつを、我妻敏監督(35)がふり返る。

「3年ほど前『うちの選手は背中が薄いな』と、体の細さが気になっていました。ウエートトレーニングはしていましたが、それだけではできない、筋力プラス柔軟性のある身体作りはできないかなと。そう考えていた時に、OBである佐々木さんに出会い、体幹トレーニングの大切さに共感したのです」。ボート部の選手時代、インターハイ、国体出場経験のある佐々木トレーナー。「全国で戦える身体作り」をチームで話し合い、長期計画の挑戦が始まった。

佐々木トレーナー我妻監督
名門校のチームを任されることの責任は重い。佐々木トレーナーは取材でまず、監督、スタッフへの感謝を口にした(左は我妻監督)

掲げたテーマは「体幹を使った、省エネピッチング」。6〜7割の力で自己最高を出す究極のテーマだ。「ピッチャーが肩が入った状態で投球を行うため、痛みやケガが起こるのです。胸を開いて、体幹をつかった体重移動をし、テークバックからの『張り』を作らなくてはいけません。正しい動作ができれば、肩、ヒジを痛めることはありません」。

<佐々木トレーナーの考える、正しい体重移動>

  • 投球動作に入る姿勢

 ↓

  • テークバックから張りを作る

 ↓

  • 胸を開いた状態からの体の回転

 ↓

  • 腕の投げ下し

 ↓

  • フィニッシュ時の下半身の粘り

この流れを「体幹」を軸にして正しく行えば、腕が自然と遅れて出てきて、打者から見にくい球が投げられる。秋〜冬にかけて、メディスンボールや、バランスボールを使ったトレーニングを繰り返した。すると春、ケガに悩まされていた選手が肩やヒジの痛みがなくなり、3月の練習試合で投げられるようになった。

作新学院・今井投手との出会い

昨秋、練習試合で作新学院に遠征した時、全国制覇した作新学院のエース・今井達也(現西武)と対面した。その時、確信したことがあった。「彼と話をさせてもらったら、肩甲骨の柔らかさと、胸の開きが素晴らしかった。鞭(むち)のようにしなる剛速球(最速152キロ)を、連投することができるのは、体幹がしっかりしていたからです。あの体を、高校野球の選手に目指してほしい」と力説する。

体幹を鍛えれば、球が速くなり、連投もできる。佐々木トレーナーの3年計画を、選手たちが実直に積み上げていった。まだ成長の途中であるが、完成形へと近づいている手ごたえがある。昨夏のエースがそうだったように「高3年夏のベストパフォーマンス」を目指し、日々の研究を惜しまない。「いまの3年生は入学時から担当した世代なだけに思い入れがあります。勝負は時の運ですが、結果につなげるサポートをしていきます」と力強く語った。

ピッチャー以外の選手ともコミュニケーションをとる佐々木トレーナー
ピッチャー以外の選手ともコミュニケーションをとる佐々木トレーナー。メンタル面でも選手たちの大きな励みになっている
バランスボールでの背筋トレーニング
バランスボールでの背筋トレーニングは、腹筋とともにバランスよく鍛える
体幹トレを行いながら、同時進行でベンチプレスやスクワットのウエートトレを行う選手たち
冬場は体幹トレを行いながら、同時進行でベンチプレスやスクワットのウエートトレを行った。一冬越えて選手たちの体格が大きく変わった
体幹を使ったドルフィンスロー
体幹を使ったドルフィンスロー。ポイントは腕だけで投げないこと。胸の張りを作って、そのまま胸から投げるイメージでスローする

2016夏のエース・渡辺法聖(富士大・1年)の例

2016夏のエース・渡辺法聖(富士大・1年)
2016夏のエース・渡辺法聖(富士大・1年)

「テークバックゼロ投法」で話題となった昨夏のエース渡辺法聖(写真中央、富士大・1年)は、宮城大会全6試合に投げ、決勝戦(対利府)でベストピッチングの2安打完封を果たした。連戦の疲れもあった中、自己最速の139キロを決勝戦で計測した。大会中はストレッチを中心に、佐々木トレーナーから献身的なサポートを受けた渡辺は「佐々木さんのお陰で、最後に、最高のパフォーマンスができました」と感謝し、大学でも教えられたストレッチを続けているそうだ。「信じて続けていればきっといい結果につながるので、頑張ってほしいです」と後輩たちにメッセージを贈った。

体幹トレーニング動画解説

【東北】投手陣の体幹トレ(姿勢)

「ピッチャーに大切なことは、頭とアゴをひいて耳、肩、腰、くるぶしが一直線になった状態で投球を行わなければいけません。肩が中に入った状態で投げると、肩痛を起こす危険があるので、正しい姿勢を身に着け、そこから投球を始めてください」(10回×10セット)

【東北】投手陣の体幹トレ(プルオーバー)

「2人一組のバランスボールトレ。大きく息を吸って胸を広げます。体幹は『タテ』をイメージして、体を起こします」(10回×10セット。ボールは5キロ)

【東北】投手陣の体幹トレ(ドルフィンキック)

「バタフライのドルフィンキックをイメージしてください。胸を突出す姿勢で、ボールを壁に打ちます。気を付けることは、腕からではなく、胸からという意識で」(10回×10セット)

【東北】投手陣の体幹トレ(選手たちの感想)

■中山翔太(2年)
「一回りも二回りも成長できた」
中山翔太(2年)

■古川原将真(2年)
「大嫌いだった体幹トレが楽しくできるようになった」
古川原将真(2年)

■葛岡仁(2年)
「自分の野球人生が変わりました」
葛岡仁(2年)

■後藤汰一 3年
「目標である「甲子園優勝」のための体幹トレです」

◆プロフィール

佐々木隆志(ささき・たかし)

1965年5月22日生まれ。宮城県仙台市出身。東北から東北学院大。高校時代はボート部でインターハイ、国体出場。大学時代はインカレ、全日本大会出場。スポーツトレーナーの宮本英治氏(元西武、巨人トレーナー)に師事。体幹トレーニング指導を学び、小学生から高校生までスポーツ選手の指導や、中高年の健康体力作りまで幅広い年齢層を指導。2014年10月から東北高校硬式野球部のトレーナーとして活動している。

(撮影・取材/樫本ゆき)

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