学校・チーム

【東北】選手の意思を尊重、成長する機会に蓋をしない〝ひろし”イズム

2023.1.10

春夏合わせて41回の甲子園出場を誇り、佐々木主浩(元マリナーズ)、ダルビッシュ有(パドレス)など多くの名選手を輩出するなど東北地区でも屈指の強豪と言える東北高校。近年は仙台育英に押され、甲子園出場からも長らく遠ざかっていたが、8月に佐藤洋監督が就任すると秋は宮城県大会優勝、続く東北大会でも準優勝と結果を残し、12年ぶりとなる選抜出場を決定的なものとしている。強豪復活の裏には何があったのか。12月の東北高校の練習を取材した。


大人のせいで野球が楽しくなくっている

佐藤監督は東北高校のOBで、在学中は4度甲子園に出場。社会人野球の電電東北を経て1984年のドラフト4位で巨人に入団し、ユーティリティプレイヤーとして活躍した経歴を持つ。現役引退後は少年野球教室を立ち上げ、あらゆるチームで臨時コーチを務めるなど長くアマチュア野球の指導に携わってきた人物だ。

以前、小中学生向けの野球教室でも取材させていただいたが、当時から一貫しているのは選手たちが自ら野球を『やりたい』ということと楽しんでやるということ。そしてその方針は高校の監督に赴任しても変わらないという。
「選手たちに野球を始めた時は楽しかかったかと聞くと『楽しかった』と答えるんですね。でも早い子は小学校高学年、もしくは中学校から楽しくなくなったという。その理由や原因を紐解いていくと大人にあるんですよ。だから最初に選手には『大人のせいで子どもや高校生の野球が楽しくなくっているというのはおかしな話だから、大人を代表して俺が謝る。だからこれからは野球を始めた時の気持ちで、楽しく野球をやってほしい』という話をしました」



あらゆる媒体で選手に対して『監督』ではなく『ひろしさん』と呼ぶようにお願いしたという記事も出ていたが、それも堅苦しくなく選手が楽しんで野球ができるようになるための一環ではないだろうか。



また、高校野球の象徴的な髪型である丸刈りも廃止。最初は選手もなかなか髪を伸ばそうとしなかったようだが、徐々に佐藤監督の目指すスタイルが分かるようになってからは自由に伸ばし始め、今では丸刈りの選手の姿は見当たらなかった。そしてそんな方針はグラウンドに着いてすぐに感じられた。

取材当日は三者面談があって全員が揃う時間が遅かったということもあるが、選手たちはそれぞれ自由にウォーミングアップを始め、グラウンドには音楽が流れていた。取材する側のこちらに対する挨拶も堅苦しさは一切なく、グラウンドから流れている雰囲気は以前取材した横浜国立大学、東京学芸大学のような国立大学に似たものがあった。



この秋に就任した原拓海コーチも「今日は走塁練習をやるみたいでみんなユニフォームを着ているのでまだ高校野球らしい方だと思いますよ。いつもは練習着もユニフォームじゃないですからね」と話していたが、そういう点もいわゆる高校野球とはかけ離れているものである。


PICK UP!

新着情報